南山大学

 
指定
選必
期間
春学期
秋学期
単位
年次
2〜4
担当者
櫻井 健吾
他の科目との関連
履修対象学科
副題 産業社会の倫理
授業概要  本講義は「人間の尊厳」を政治・経済の視点から考察する。そのために人間の営みと深く関わっている政治や経済のあり方、また政治学や経済学などの社会科学的観点から見られる人間の問題に注目し、現代社会に生起している政治的、経済的現象のなかで「人間の尊厳」がどのように扱われているかを見極め、これを維持・回復していくために、どのような方策と努力が必要かを検討する。
学修目標  18世紀後半のヨーロッパで始まった産業革命は、人類史上まったく未知の新しい現象であった。確かに、長期的に見れば、産業革命によって現代の豊かさが実現した。しかし、産業革命には、職人や労働者の貧困化とか、社会の大混乱とかいったマイナスの側面もあった。この側面は「社会問題」という言葉で捉えられた。
 この社会問題にどう対処すべきか、この面で当時のヨーロッパでは、自由主義、社会主義、キリスト教が激しく対立した。この講義では、キリスト教の立場からこの社会問題に対処したドイツの思想家ケテラー(1811−1877年)を取り上げ、ケテラーが自由主義と社会主義と対決しながら、どのような思想を展開したか、ケテラーの思想がその後のカトリック政治・社会運動としてどのような大きな流れとなっていったか、さらに後の時代の社会保障と社会国家の形成やEUの補完性原理の確立にどのように貢献したかを述べる。
 この講義のキーワード:産業革命、社会問題、自由主義、社会主義、キリスト教、ケテラー、社会保障、社会国家、補完性原理。
授業計画 毎週プリントを配付しながら、以下のテーマを解明していく。
1.はじめに
2.ケテラーと現代
3.自由と社会問題に関するケテラー演説
4.キリスト教所有権思想に関するケテラー説教
5.キリスト教所有権思想は現代世界でも有効か
6.キリスト教労働者運動のマグナカルタに関するケテラー講演
7.ケテラーの賃金論と共同組合論
8.工場労働者のための教会の支援活動に関するケテラー報告
9.自由主義、社会主義、キリスト教に関するケテラー講演
10.なぜ、キリスト教は自由主義と両立できないのか
11.なぜ、キリスト教は社会主義と両立できないのか
12.キリスト教人間論と補完性原理
13.自由とその危機に関するケテラー講演
14.キリスト教に自由を語る資格はあるのか
15.まとめと討論会
授業時間外の学習(準備学習など) 毎週の予定された章をあらかじめ自宅で予習し、疑問や質問を準備してくること
評価方法 授業参加度(30%)、レポート(70%)
テキスト 毎週のプリントとケテラー『自由主義、社会主義、キリスト教』晃洋書房、2006
その他