南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
1〜4
担当者
江本 純
他の科目との関連
履修対象学科
副題
授業概要  「クローン動物」をご存知でしょう。1997年2月、イギリスのロスリン研究所で羊の体細胞から「同じ遺伝子をもった動物」であるクローン羊ドリーが誕生しました。「同じ遺伝子を持つ」ということはどういうことだと考えますか。私たちの体は母親と父親から受け継いだ遺伝子という、いわば設計図によって作られています。つまりは設計図であるDNAがあれば、生物体を作り出すこともできるわけです。ドリーの場合は一個の体細胞のDNAが設計図となりました。
 “ジュラシック・パーク”という映画もありました。化石の中から遺伝子を取り出して、生きた恐竜を復元する。“生命をつくるなどとんでもない”と思っていたあなたは、この映画をみて、“こんな手があったのか” と、その意外さと巧妙さに魅了されたと同時に、空恐ろしさを感じたことでしょう。もちろん生物を作りだすなど、夢のまた夢ですし、やってはいけないこと(?)なのかもしれませんが、この “生命の作り方” は現実味をおびてまいります。その秘密は、今はやりのDNAつまり遺伝子にあります。遺伝子とは、細胞を構成するさまざまなタンパク質をつくるための設計図です。私たち人間をつくる設計図も、もちろん遺伝子DNAからできています。この人間の設計図を広げますと、約2mくらいになるそうです。大腸菌の設計図はほんの数mmです。大腸菌よりも人間の方がはるかに複雑にできていますから、これは当然なのでしょう。ところが人間よりもちょっぴり単純なカエルの設計図は、なんと20mを超えます。カエルが人間よりも10倍も複雑であるとはとても考えられません。でも設計図の大きさは10倍なのです。いったいどうなっているのでしょう。遺伝子はたしかに設計図ではありますが、まだわからないこともいっぱいあるのです。最近の生物学の急速な発展から、どうやら遺伝子DNAは私たちの寿命や老化、そしてガンにも関係しているらしいのです。
学修目標  この授業では、遺伝子がもっている謎の部分を解きあかしながら、遺伝子がどのようなもので、また人間社会がこの遺伝子をどのように利用しようとしているのかを学んでいきます。文科系の皆さんは“遺伝子などは理科系の問題” と考えてはいませんか。今や遺伝子は社会・文化の問題となりはじめています。皆さんが社会で働いていく上で、この知識はきっと役にたちます。是非とも履修しましょう。
授業計画 I.現代生物学とは何か
  1.現代生物学とは何か:“生きている”ということを細胞レベルで理解する
  2.細胞はいったい何をしているのか:“生きている”とはどういうことか
  3.細胞の構造:タンパク質をつくる装置
II.タンパク質と遺伝子
  4.タンパク質の構造:複雑なタンパク質、実は単純な構造
  5.遺伝子DNAの構造と自己複製という特性:遺伝子はタンパク質の設計図
  6.遺伝子情報の流れとタンパク質合成:遺伝子DNAからタンパク質へ
  7.遺伝子DNAの情報解析:生物の精密なプログラム
III.ウィルスとはどんなものか
  8.ウィルスの構造と増殖システム:細胞のパラサイトという運命
  9.エイズウィルス(HIV)とエイズという病気
IV.体の防御機構:免疫系
  10.エイズと免疫
  11.免疫の働く仕組み:巧妙で優れた体の防御機構
  12.自己を認識する:体にも自己がある
V.遺伝子病と遺伝子治療
  13.遺伝子治療の原理:遺伝子治療にウィルスが用いられる
  14.遺伝子治療の現状と問題点
VI.15.iPS細胞と現代医療
授業時間外の学習(準備学習など) 事前に資料・参考書などを、指定した方法で配布する。上記の授業計画を参考に、該当部分を予習しておくこと。
評価方法 筆記試験(100%)(出欠は学則に基づく)
テキスト 生物学教室で準備したプリントを配布
その他