南山大学

 
指定
期間
夏期後半
単位
年次
2〜4
担当者
加藤 政洋
他の科目との関連
他学科履修
副題 都市・景観・エロティシズム
授業概要  フランス人思想家であり、稀代の記号学者として知られたロラン・バルトは、「記号学と都市計画」と題された講演のなかで、次のような発言をしています。

都市は、本質的に、また意味論的に、他者との出会いの場であり、まさにこの理由によって、中心部はどの都市においても集合地点となるのです。…〔略〕…中心街は、社会的活動や、語の広い意味においてエロス的活動と言ってよい活動の交換の場として生きられます。もっと適切に言えば、中心街はつねに、さまざまな秩序壊乱的な力、断絶の力、遊戯的な力が働き衝突する空間として生きられます。

 このように述べるバルトは、「都市のエロティシズム」をその言葉のもっとも広い意味において、つまり〈社会性〉なるものと区別することなく用いることで、「歓楽街という概念は、都市の機能主義のもっとも執拗なまやかしの一つ」と喝破し、都市空間の意味論的な読解の必要性を説いたのでした。
 今期の表層文化論では、このバルトが提示した「都市のエロティシズム」という考え方をひとつの導きにして、都市空間の表層に浮かび上がる諸種の〈エロス〉の戯れ、またそれとせめぎ合う機能主義的な空間管理のあり方に着目することで、モダン都市における表層文化を考察してみたいと思います。このことは、都市景観に明に暗に刻まれた〈エロス〉の徴候を読み取ることで、文化の政治的な次元を捉え返す実践と言い換えることもできるかもしれません。
学修目標 過去・現在を問わず、土地空間上にあらわれる、あるいは景観に刻み込まれた(現実の)文化事象を読み解く力を受講生の皆さん自身が養い身につけること、それが本講義の大きな目標です。とりわけ、都市空間を構制する文化政治の力学を問い込むことのできるようなものの見方、概念、視角をひとつでもおおく修得してください。
授業計画 (1)都市とは何か? 
  topics:ガイダンス、都市への関心、都市的なるもの
(2)都市空間の徴候的読解
  topics:都市の空間構造、中心-周縁、空間の読解
(3)都市のエロティシズム
  topics:中枢性、ロラン・バルト、アンリ・ルフェーブル、ヘテロトピー
(4)都市図を読む
  topics:読図、空間の文法とリテラシー
(5)カフェーの時代(1)
  topics:開化するカフェー文化、女給、エロ・グロ・ナンセンス
(6)カフェーの時代(2)
  topics:遊廓・花街、九鬼周造、萩原朔太郎
(7)カフェーの時代(3)
  topics:特殊飲食店、風俗営業、取り締まり
(8)お座敷あそびはどこでする?
  topics:花街、料理屋、料亭、お茶屋、芸妓・舞妓
(9)風俗営業の文化政治学
  topics:東京とGHQ、待合政治? 料亭政治? 特殊飲食店、カフェー
(10)戦後沖縄の都市形成(1)
  topics:米軍占領下、那覇、歓楽街
(11)戦後沖縄の都市形成(2)
  topics:米軍占領下、コザ、歓楽街、基地と都市
(12)沖縄の社交街
  topics:歓楽街、社交街、そして……
(13)沖縄における風俗営業の変遷
  topics:料亭、カフェー、Aサイン、社交組合
(14)料亭街から社交街へ
  topics:基地周辺、市場と社交街、都市計画
(15)都市のエロティシズム[再論]
授業時間外の学習(準備学習など) 配布した資料・講義ノートに必ず目を通しておいてください。担当者の関連する著書(『敗戦と赤線』光文社新書、『京の花街ものがたり』角川選書など)、授業時間内に紹介する参考文献に目を通しておくと、授
業内容の理解がより深まると思います。
評価方法 レポートが50%、平常点(アンケート、授業参加度、小レポート)が50%。
テキスト 使用しません。参考文献は第1講で基本的なものを、その他は各回に紹介します。
その他