南山大学

 
指定
期間
夏期後半
単位
年次
2〜4
担当者
東川 浩二
他の科目との関連
他学科履修
副題
授業概要  英米法、特にアメリカ法について検討することによって、いわゆる英米法的発想や制度の理念について理解を深める。具体的には、英米法総論について講義した後、今年度はアメリカ不法行為法の概要と、不法行為法の各論として、製造物責任法を取り上げる。製造物責任は、タバコ訴訟に見られるように、自分が被った損害を他者に責任転嫁するものと理解されがちであるが、そのような見方の妥当性についても、全員で議論、検討する。
学修目標  英米法と日本法で、同じ考え方を採用している部分、異なる部分に目を配り、英米法を知ることによって、日本法を再発見すること。
授業計画 1 英米法総論 第1回から4回まで、英米法総論を講義する。今回は講義内容の説明と、英米法とは何か、司法試験にも各種資格試験にも出題されない英米法を学ぶ意義はどこにあるのかついて考える。
2 英米法総論 判例法主義とはどのような意味かについて、制定法主義と比較しながら考える。また、判例法主義を支える先例拘束性の原理について、日本法における先例の重要性と比較しながら考える。
3 英米法総論 公法の指導的原理である法の支配について、その成立過程と意義について考える。
4 英米法総論 市民の司法参加制度として、陪審裁判を取り上げる。とりわけ、素人である一般市民の判断の正確性、また「公平な陪審(impartial jury)」とは何かについて議論する。
5 不法行為法 第5回から14回まで、アメリカ不法行為法の概要について講義する。今回は、アメリカ私法の概要を講義した後、故意の不法行為について検討する。
6 不法行為法 過失不法行為(negligence)の構造について、特にその実質である注意義務(違反)、予見可能性について検討する。
7 不法行為法 前回の内容を整理した上で、訴訟に勝つために必要な一応の証明(prima facie case)について検討し、あわせて原告の証明責任を緩和する制度として過失推定則(res ipsa loquitur)について議論する。
8 不法行為法 交通事故などでは、双方に過失が認められる場合も少なくない。そうした事例に対応する考え方として、ここでは寄与過失(contributory negligence)と比較過失(comparative negligence)の考え方を検討する。
9 不法行為法 前回に続いて、危険の引受(assumption of risk)について検討し、また一方当事者が設定した免責規定(immunity)の有効性についても考える。
10 不法行為法 加害者の不注意の程度に比べて発生した損害があまりにも大きい場合であっても、加害者は全面的に責任を負うべきか否かについて検討する。
11 不法行為法 因果関係論(causation)について検討する。
12 不法行為法 ここまでのまとめとしてPalsgraf事件について検討する。
13 不法行為法 不法行為法の各論として、第14回と15回で、製造物責任(products liability)について議論する。ここでは、製造物責任法の必要性と初期の判例の展開を紹介する。
14 不法行為法 保証責任(warranty)と厳格責任(strict liability)に基づく製造物責任について議論する。
15 まとめ この講義全体のまとめを行う。
授業時間外の学習(準備学習など) ・集中講義なので、事前に教科書や資料を読んでおいた方が、効率的に試験準備ができるでしょう。
・アメリカの法制度はどこか変だ、と思っている人は、アメリカ人がそのような変な制度を採用している理由について考えてみて下さい。彼らにも何かの理由があるはずです。
評価方法 期末試験
テキスト 東川浩二『アメリカ法講義案I』(信山社2008)(必携)
参考書として以下のものをあげる。また、講義中に適宜紹介する。
東川浩二『アメリカ法講義案II』(信山社2010)
丸山英二『入門アメリカ法(第2版)』(弘文堂)
樋口範雄『アメリカ不法行為法』(弘文堂2009)
藤倉皓一郎他編『英米判例百選(第3版)』(有斐閣)
その他 1:この講義は、判例・通説を覚えたり(答え合わせ!)各種資格試験の対策のために行われるものではありませんので、常に教科書的な答えを求める人には向いていません。それでも、現行の法制度では勝ち目はないが、なんとか依頼人のために勝訴できる理屈を考えたい人、問題をいろんな角度からじっくりと検討したい人、評判の悪い陪審裁判の実際について関心のある人、その他、英米の法制度や法文化に関心のある人には向いているでしょう。
2:日本の不法行為法を履修している必要はありません。しかし履修していれば比較の際に、より面白い発見があるかもしれません。
3:講義は日本語です。講義中に発言を求めることがあります。正解が分からない、自信がないといって心配せず、気楽に発言して下さい。少数説、珍説でも、それで首尾一貫していれば、それがあなたの学説です。