南山大学

 
指定
期間
秋学期
単位
年次
1・2
担当者
長谷川 雅雄
講義題目 対象理解と援助の実際
開講キャンパス
授業概要  臨床心理学は、心理的苦痛や危機に直面している人に対して心理的援助を行なうための実践的な領域であり、主として二つの側面から成り立っている。一つは、深層心理学や精神病理学などの知見を活かして探索していく「対象理解」という側面であり、いま一つは、心理的援助を具体的にどう進めていくかを考える「心理療法」的側面である。本授業も、この二つの基本的な枠組みを重視しながら進めていく。講義や文献講読に加え、ロール・プレイそれに「事例発表」などを取り混ぜて行なっていく。その内容は、病院臨床(気分障害、不安障害、人格障害など)、学校心理臨床、家族に対する臨床的理解とその対応、健康者の心理的苦悩に対するカウンセリングなどを含む。これらのことを通して、精神分析的(精神力動的)アプローチおよび折衷的(統合的)アプローチを中心とした心理療法の基本的な枠組みの理解を進めていく。
学修目標  上記の方針のもとに、毎回全員のディスカッションによる再吟味を行ない、「対象理解」と「心理的援助」に対する認識を深めていくことが学修目標となる。このため、各受講生の活発な討論が期待される。
授業計画 (1)   講義:本授業の具体的な内容とねらいについて説明するとともに、「対象理解」と「心理的援助」の難しさと重要性について概括的な講義を行なう。
(2)〜(3) 文献講読:(1)に関連する論文をテキストにして、発表と討論を行なう。
(4)〜(6) ロール・プレイ:全受講生が援助者役とクライエント役の双方を演じることによって、臨床の実際場面を模擬的に体験する。この場合、両者の具体的な組み合わせは、カウンセラー(臨床心理士)とクライエント(その家族でもよい)、担任教師と生徒またはその家族、学校心理士と生徒あるいはその担任教師、看護士と患者など、いずれを想定してもよい。それぞれの模擬面接に対して、演者自身及び他の受講生全員から、その来談者の心理や援助者の対応について、コメントを出してもらい、全体討論によってその臨床的意義について検討・吟味していく。
(7)   講義と討論:ロール・プレイを振り返りながら、心と行動に関する病理と心理療法に関する講義を行ない、それに基づいて討論を行なう。
(8)〜⑫ 事例発表:「事例」は、病理的なものであっても、そうでなくともよい。たとえば、教育現場や他の職場において、対応に苦慮したとか、自分なりに役割を果たせたのではないかと思えるような、過去または継続中の事例でよい。発表の後に、「対象理解」と「援助のあり方」を巡って全体討論を行なう。また、その事例に関連した、臨床心理学的事象、たとえばDSM−IV、精神力動的な病態理解、アセスメントの方法及び面接の構造や心理療法について、補足的な講義を適宜行なう。
⑬〜⑭ 全体討論と講義:事例発表を振り返り、個々の事例が持つ個別性と普遍性を再検討し、とくに後者について議論を深める。そしてそれに関連した深層心理学および学校心理臨床に関した講義を行なう。
⑮   総括
授業時間外の学習(準備学習など)  「文献講読」と「事例発表」の際に、発表者はテキストないし事例の概要を、A3またはA4用紙にまとめたものを作成し、当日全員に配付すること(事例の場合は、授業終了時にそのレジュメを発表者が回収し、個人情報の漏洩防止に努めること)。
評価方法  レポート(3割)と発表・討論の姿勢(4割)、それに授業参加度(3割)によって評価する。
テキスト
その他  文献講読時には事前に論文(未定)を配付するが、教科書類は使用しない。授業の内容に応じて、必読文献や参考図書をそのつど紹介する。