南山大学

 

【科目コード】97669

【科目名称】組織と人事の経済学

【担当者】湯本 祐司

【単位数】2                    【配当年次】12    【開講期】春学期

 

【授業概要】

ビジネスを成功させるためには、優秀な人材を適切に活用することが必要不可欠である。そのためには、採用制度、社内訓練制度、賃金制度、昇進制度などをいかにデザインするかを考えなければならない。本科目では、このような人事と組織の問題について、経済学的に分析する。具体的には、学歴とシグナリング、歩合給か固定給か、社内昇進とトーナメントの理論、解雇と希望退職制、チーム生産、従業員間の利害行動などの問題を取り扱う。各回の授業では、トピックの講義の後、提出してもらった宿題をもとにディスカッションをする。

【到達目標】

ビジネスにおける人事および組織の諸問題を経済学、特に情報の経済学、契約理論を活用したインセンティブ設計の問題としてとらえ、適切に分析できる知識とスキルを身につけることを到達目標とする。

【授業計画】

1.          オリエンテーション
(1)
授業の進め方 (2) 人事経済学とはなにか  (3) 組織経済学とはなにか

2.          採用
(1)
採用基準の設定 (2) 適任者の採用

3.          労働者の生産性の理解
(1)
生産性における非対称情報の問題 (2) 職務配置の問題

4.          給与支払い
(1)
投入に基づく給与払いと産出に基づく給与払い (2) 変動給与と固定給与

(3) 短期および長期のインセンティブ (4) ケース

5.          人的資本理論、離職、解雇、希望退職および定年
(1)
人的資本 (2) 学校教育 (3) 職場における訓練 (4) 訓練と転職 (5) 離職は望ましいか

         (6) 企業特殊的人的資本 (7) 選別的解雇と希望退職 (8) 定年制 (9) ケース

6.          情報、シグナルおよび引き抜き
(1)
生産性のシグナリング (2) よそから引き抜きの長所と短所 (3) 提示額とのマッチング

7.          動機付けとしての昇進、社内における利害行動
(1)
昇進の役割 (2) トーナメント・モデル (3) 絶対性かと相対性か

(4) トーナメント競争と妨害 (5) ケース

8.          年功型インセンティブ制度、チーム
(1)
年功とインセンティブ (2) チームにおけるインセンティブ (3) 世代間の技能移転の問題

9.          雇用関係についての再考
(1)
アウトソーシング (2) 原価加算方式対プロジェクトベース支払い方式 (3) フランチャイズ

10.       非金銭的報酬と付加給付
(1)
測定の問題 (2) 賃金と付加給付 (3) 年金給付 (4) 有給休暇

11.       職務について
(1)
職務の定義 (2) 人を職務に合わせるのか、それとも職務を人に合わせるのか

12.       評価について
(1)
評価の目的 (2)評価のルール (3) えこひいきと偏見 (4) 誰が誰を評価すべきか (5) ケース

 

 

13.       労働者の権限強化
(1)
オープンブックマネジメント (2) 労働者からの経営陣への意思伝達

(3) 権限強化と収入プロファイル (4) 労働者の権限強化と創造性

14.       日本の人事制度(1)
日本的人事制度の経済合理性と問題点

15.       日本の人事制度(2)
人事制度改革 

【授業時間外の学習(準備学習など)】

  テキスト・配布資料の予習復習、宿題、ディスカッションの準備

【評価方法】

定期試験(レポート) 35%

提出物 40%

 ホームワークの提出

クラスへの貢献度 25%

 授業中のディスカッションへの参加態度や発言内容

【テキスト】

  E. P. ラジアー『人事と組織の経済学』日本経済新聞社 1998

【参考文献】

P. ミルグロム・J. ロバーツ『組織の経済学』NTT出版 1997

大湾秀雄「ビジネススクールで学ぶ組織と人事制度の経済学」『経済セミナー』日本評論社

20084月号〜200923月号