学科・教科ごとの目標 人文学部キリスト教学科 中一種/高一種宗教
●人文学部キリスト学科(中一種免(宗教))(高一種免(宗教))
① 宗教科の教員養成に関する理念
宗教科の教員は、長い歴史を通じて、人間の精神が宗教・思想というかたちで蓄積した叡知を、次世代以降の人々に継承していく責務を負うものである。このように精神的な事柄を扱う宗教科の教員には、専門的知識はもちろんのこと、心の問題を取り扱うための繊細な感受性と深い理解力と、そして適切な言葉を選び生徒に思考を促すことができる表現力が求められる。建学の精神であるキリスト教精神を学ぶために設置された本学科は、様々な対立や軋轢を乗り越え得るキリスト教的な思考や実践について、その実効性とアクチュアリティを伝達し、また自らもそのように振る舞える人材の育成を目指している。
同時に、宗教科の教員は、宗教について否定的なイメージを抱いている今日の日本の若者に対して、宗教について知ることは異文化を深く理解するために不可欠であると共に、日本という自国の文化を理解するためにも必須であることを教示する必要がある。その際には、世界各地に存在する様々な宗教・思想について中立的立場から多視点的に理解・解説することが重要であり、そのために必要な、過去から現在に至るまでの宗教に関する広範な知識と、それに基づく広い視野が不可欠である。
さらに、宗教科の教員は、文献に基づく知識だけではなく現代社会への問題関心を持ち、宗教・思想という精神的遺産を現代社会に活かすために有効な指針を教示できる人間であることが望ましい。とりわけ、少なくとも表向きは宗教が関わっている社会問題が山積する現代にあって、新聞の紙面を賑わす様々な問題をどのようにして捉え、宗教をどのように考えるべきなのかについて、生徒たちを導くことができる人材が求められている。
②上記の理念と学科における教育との関係
「人間の尊厳のために」という大学全体の建学の理念を担う本学科では、キリスト教について、宗教、文化、芸術、哲学、歴史など様々な側面から、学問的方法論に基づいて学ぶことができる。このような本学科が目指すのは、他の宗教や文化への理解を深めることによって、広い教養と視野を持って世界を理解し、現代社会の諸問題に柔軟に対応し貢献できる人の養成にほかならない。より具体的には、古代から現代に至る歴史や、哲学・思想による探求、キリスト教と様々な宗教との対話や比較、生命や環境への倫理的問いかけなど、複数のディシプリンに基づく多様な講義・演習が設置されており、人間の尊厳の実現可能性や困難な状況を乗り越えるために不可欠な希望の根拠など、時代状況が変わろうとも決して変わることのない人間の課題について、学生一人ひとりが幅広く学び、深く思考するための学習の場が提供されている。
以上の本学科の特色を、①で述べた教員養成の理念に関連して説明するならば、以下のようになる。本学科では、ラテン語を1年次の必修としており、選択科目として開講されている「聖書ギリシア語」「聖書ヘブライ語」を履修することにより、聖書をはじめ、西欧文化の礎となった古典的文献に触れることもできる。と同時に現代の宗教についても選択科目「宗教社会学」などを通じて学ぶことができる。こうしたカリキュラム編成によって、人間の知的遺産について古代から現代に至るまで広範に学ぶことができる。また、学科の特色である少人数教育は、講義や演習いずれにおいても、講師や受講者同士が密にコミュニケーションを取りながらじっくり問題に取り組むことを可能にするため、心というデリケートな問題に取り組むための感受性や、容易に解答の出ない複雑な問題に対する思考力の養成に極めて適している。さらには、本学科では決してキリスト教という一宗教の立場のみを学ぶのではなく、必修科目「宗教学」および「宗教史Ⅰ」ではキリスト教以外の諸宗教についての知見を深めることができ、先に触れた選択科目「宗教社会学」では現代社会と宗教との関係について学ぶこともできる。加えて「日本キリスト教史」では、キリスト教宣教史を通じ、日本における宗教状況についても学ぶことが可能である。こうした諸科目を受講することにより、諸宗教に対して中立的立場から理解・解説する能力が養われると共に、今日の宗教が関わる諸問題についても、自分の意見を持つことができるようになる。
③選択、必修の「教科に関する科目」とそのねらい
本教職課程では、教育職員免許法の規定に従って「宗教学」、「宗教史」、「教理学・哲学」の三つの科目を開設し、それぞれの科目内で複数の授業科目を設けている。大別すれば、宗教学では宗教という人間の営為とは何かを教え、宗教史では過去の宗教の在り様とその歴史的展開を教示し、教理学・哲学ではキリスト教を中心とした宗教思想について教授する。必修科目「宗教学」、「宗教史Ⅰ」、選択必修科目「宗教思想A、B」では、②でも述べたように、キリスト教以外の諸宗教およびその思想内容を概括的に学び、宗教について教えるために必要な中立的かつ包括的な知識を養う。それ以外に設置された「宗教学」に属する13科目、「宗教史」に属する19科目、「教理学・哲学」に属する14科目については、主に2年次以降に、自身の関心に即して自由に選択して受講することが可能である。