学科・教科ごとの目標 理工学部ソフトウェア工学科 高一種情報
● 理工学部ソフトウェア工学科(高一種免(情報))
①ソフトウェア工学科における教育の特徴
中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」では、21 世紀は「知識基盤社会」 の時代であると記されている。知識基盤社会を支えるのはコンピュータであり、コンピュータのソフトウェアはそのような社会ではますます重要性を増すことが容易に予想される。例えば、現在の自動車の性能を決定するのは、もはやハードウェアではなく、そのハードウェアを制御し、ハードウェア間の情報のやり取りを行うコンピュータのソフトウェアの良し悪しだといわれている。実際、現在の自動車には100 個を越えるコンピュータが搭載されており、そのコンピュータでは、1700 万行にものぼるプログラムが走って自動車の制御やコンピュータ同士の情報の交換を行っている。ところが、このソフトウェアを作成する工程は、いわゆる従来のものづくりの工程のように進化しておらず、その生産性の低さが問題になっている。それとあいまって、ソフトウェア技術者の不足は広く知られており、日本経済団体連合会など産業界からもその危機的な状況が指摘されている。ソフトウェアは、数学はもちろん、システム工学、通信ネットワーク、オペレーションズ・リサーチ、統計学、その他の工学分野で得られた成果を具体的にコンピュータ上で実現する。このことから、ソフトウェア技術は、数学およびすべての工学技術をコンピュータ上で実現するためのメタ技術と考えられる。ソフトウェア工学は、ソフトウェアを効率的に作成するための理論と方法論を研究する学問分野である。我々のソフトウェア工学科では、ソフトウェア工学の基礎を学修する教育課程を設置している。そこでは、単にプログラムを作成する技術のみを学ぶのではなく、ソフトウェアをいかに合理的に、しかも効率的に作成するかを学ぶ。これによって、ソフトウェア作成の生産性を上げ、ソフトウェア技術者の不足を解消することができる。このような教育課程を持つ学科は従来我が国にはなく、ソフトウェア工学科の設置は21 世紀の知識基盤社会の要請に応える時宜にかなったものである。
ソフトウェア工学科ではソフトウェアの専門技術者を養成する。その教育課程は、中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」でいわれている専門教育型である。ただし、ソフトウェア工学の基礎となる、情報科学、数学、物理学には十分な講義を配当し、卒業後の情報技術の進歩にも十分に対応できるような数学、物理学の素養を学修する。卒業生はいわゆる即戦力としての役割を就職した企業で期待されることになるが、これらの基礎的な素養を身に着けていることによって、ソフトウェア工学の最先端の知識や技術を卒業後も吸収することが可能になる。したがって、即戦力であるとともに、長期間にわたって高度な専門技術者として活躍できる。また、情報技術の進歩にも十分に対応できるような情報科学、数学の素養を学修していることから、大学のもつ教職課程を履修することにより、専門知識をもった情報科教員として活躍することも期待できる。
②ソフトウェア工学科が育てる教師像
本学科では、数学の素養、教科情報に関する幅広く深い知識、および、情報教育に応用可能なソフトウェア工学の専門知識を身に付けた教師を育成する。この育成は、本学科の教育課程に加え、教職課程を履修することにより実現できる。数学の素養と教科情報の4つの分野の幅広く深い知識は、本学科の教育課程のうち、主に1、2年次の基礎教育の課程で身につける。教科情報の残りの2分野の幅広く深い知識は、教職課程に配置された「教科に関する科目」の履修で身につける。そして、情報教育に応用できるソフトウェア工学の専門知識は、主に3、4年次の専門教育の課程で身につける。具体的には、以下の③、④、⑤で述べる。
③理工学部1、2年次の教育課程とそのねらい
本学科の学生は、主に1、2年次の基礎教育の課程で、数学の素養と教科情報における4分野「情報社会及び情報倫理」、「コンピュータ及び情報処理(実習を含む)」、「情報通信ネットワーク(実習を含む)」、「情報と職業」の幅広く深い知識を身につける。その課程は、理工学部の(本学科を含む)3学科の共通の内容であり、3学科の学問の基礎として、十分な講義を配当している。具体的な内容は、数学、物理学、情報科学、通信ネットワーク、情報倫理などである。①で述べたとおり、これらは、情報技術の進歩にも十分対応できるような素養でもある。
とくに、数学の素養のための科目は、1、2年次の必修科目として設置している。さらに、重要な微分積分学と線形代数学には、講義内容を補う、少人数クラスの演習科目も設置している。これらにより、数学の素養を身につけることができる。この数学の素養は情報科教員にとっても必要である。高等学校学習指導要領第2章第10節第3款1の(1)と(5)にも、情報科と他教科(とくに数学)との連携の重要性が述べられている。 教科情報の4分野のための科目は、本学科の必修科目であるが、教職課程に配置された「教科に関する科目」でも必修となっているので、④で述べる。
④選択、必修の「教科に関する科目」とそのねらい
情報科教師は、「情報社会及び情報倫理」、「コンピュータ及び情報処理(実習を含む)」、「情報システム(実習を含む)」、「情報通信ネットワーク(実習を含む)」、「マルチメディア表現及び技術(実習を含む)」、「情報と職業」の6分野について、幅広く深い知識を持つことが望まれる。本学科における「教科に関する科目」はこの知識を修得できるように指定されている。②で述べたとおり、このうちの4分野は理工学部の1、2年次の基礎教育の課程で修得できるように指定されている。
深い知識について具体的に述べる。「教科に関する科目」において、各分野の必修科目は、「情報社会及び情報倫理」と「情報と職業」はそれぞれ1科目2単位、「コンピュータ及び情報処理(実習を含む)」は4科目8単位、「情報システム(実習を含む)」は2科目3単位、残り2分野はそれぞれ2科目4単位である。これらの科目は、その分野の専門性が強い専任教員が担当している。さらに、このうちの2分野の必修科目は、専門性の高い2年次秋以降に配置される科目である。また、実習を含む4分野のうち3分野は、実習科目を独立に設置している。以上のことから、各分野の深い知識が修得できるようになっている。 幅広い知識について具体的に述べる。「教科に関する科目」の実質的必修科目は、上記の必修科目の合計13科目24単位である。この数は、「教科に関する科目」として必要な20単位を超えている。この他にも、11科目22単位以上の選択の「教科に関する科目」を指定している。
⑤ソフトウェア工学科3、4年次の教育課程とそのねらい
本学科の学生は、主に3、4年次の専門教育の課程で、情報教育に応用できるソフトウェア工学の専門知識を身につける。①で述べたとおり、本学科は、情報技術の進歩にも十分対応できるような情報科学・数学を修得し、さらに、それらをもとにしたソフトウェア工学を修得した人材を育成している。
3、4年次に配置された専門教育の課程では、ソフトウェア工学の専門知識、およびそれまでに修得した知識・技能の実践的な応用力を養う。すなわち、この課程では、情報および情報技術をソフトウェアに活用するための専門的な知識・技能を修得するだけでなく、これらの知識・技能を実際の問題に応用することも行う。この応用は、情報の科学的な扱い方や、社会における情報技術の役割や影響を、具体例をとおして理解することにつながる。これらは、学習指導要領で述べられている目標に対応しており、この課程で得たものは、情報教育へ応用できるはずである。