学科・教科ごとの目標 理工学部システム数理学科 高一種数学
● 理工学部システム数理学科(高一種免(数学))
①システム数理学科における教育の特徴
中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」では、21 世紀は「知識基盤社会」の時代であると記されている。近年の予想を超えた数理技術と情報通信技術の進歩によって、ものづくりにおいても、統計分析や最適化計算が重要性を増している。例えば、現在の自動車の設計は、自動車のシステムを設計することに重点が置かれている。このシステムの設計においては、計測データの分析や、それを用いたモデル化、最適化計算が非常に重要な役割を担っている。アジア諸国の急速な工業的な発展の中で、我が国がものづくりを進めていくためには、このデータ分析や最適化手法においてより高度な技術を盛り込み、差別化を図ることが重要である。これは、自動車だけでなく、工作機械、航空機、船舶などのすべてのものづくりにも言えることである。すなわち、統計学に基づく情報の分析と、オペレーションズ・リサーチによる最適化手法が、今後の我が国のものづくりに非常に重要な役割を果たす。ところが、現在、若者の数学離れもあって、このような技術者は極度に不足しており、今後の我が国のものづくりの発展が危ぶまれている。
このような社会的な要請を受けて、システム数理学科では、最適化やシミュレーションを学ぶオペレーションズ・リサーチ、データ解析とその基礎となる統計学を学修する教育課程を設置している。そこでは、単にオペレーションズ・リサーチや統計学の理論を学ぶだけではなく、それらの知識を用いて実際問題を解決するための手法を演習を通して学修している。これにより我が国のものづくりを支える高度なシステムの分析、最適化に貢献することができる。
システム数理学科では、データ解析と最適化手法の情報アナリストを養成する。その教育課程は、中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」でいわれている専門教育型である。ただし、その基礎となる情報科学、数学、物理学には十分な講義を配当し、卒業後のあらゆる環境に十分に対応できるような情報科学、物理学の素養を学修する。卒業生は情報分析の担い手としての役割を就職した企業で期待されることになるが、これらの基礎的な素養を身に着けていることによって、様々な領域に関して培った知識や技術を適応し、卒業後も新たな知識や技術を吸収することが可能になる。したがって、現在の情報分析に携われるだけでなく、長期間にわたって高度な専門技術者として活躍できる。また、技術の進歩にも十分に対応できるような情報科学、物理学の素養を学修していることから、大学のもつ教職課程を履修することにより、専門知識をもった数学教員として活躍することも期待できる。
②システム数理学科が育てる教師像
本学科では、数学の幅広く深い知識、および、数学教育に応用可能な高度な数学の専門知識を身に付けた教師を育成する。この育成は、本学科の教育課程に加え、教職課程を履修することにより実現できる。本学科の教育課程のうち、主に1、2年次の基礎教育の課程で、数学の素養を身につけ、それに、教職課程に配置された「教科に関する科目」の履修を加えることで数学の幅広く深い知識を身につける。そして、主に3、4年次の専門教育の課程で、数学教育に応用できる高度な数学の専門知識を身につける。具体的には、以下の③、④、⑤で述べる。
③理工学部1、2年次の教育課程とそのねらい
本学科の学生は、主に1、2年次の基礎教育の部分で、数学の素養を身につける。その課程は、理工学部の(本学科を含む)3学科の共通の内容であり、3学科の学問の基礎として、十分な講義を配当している。具体的な内容は、数学、物理学、情報科学、通信ネットワーク、情報倫理などである。①で述べたとおり、これらは、情報技術の進歩にも十分対応できるような素養でもある。
とくに、数学的素養のための科目は、1、2年次の必修科目として設置している。さらに、重要な微分積分学と線形代数学には、講義内容を補う、少人数クラスの演習科目も設置している。これらにより、数学教師に必要な、数学の素養を身につけることができる。
④選択、必修の「教科に関する科目」とそのねらい
数学科教師は、代数学、幾何、解析、確率・統計、コンピュータの5分野について、幅広く深い知識を持つことが望まれる。システム数理学科における「教科に関する科目」はこの知識を修得できるように指定されている。 深い知識について具体的に述べる。「教科に関する科目」において、各分野の必修科目は、代数学は5科目10単位、幾何は1科目2単位、解析は4科目8単位、確率・統計は2科目4単位、コンピュータは1科目2単位である。さらに、各分野における必修科目のうち、1科目2単位は専門性の高い2年次秋以降に配置される科目である。名称は、それぞれ「代数系入門」、「幾何と離散構造A」、「応用解析学」、「統計的方法」、「アルゴリズム論」であり、名称からもその分野と関連性が読み取れる科目ばかりである。これらの科目は、その分野の専門性が強い専任教員が担当している。
幅広い知識について具体的に述べる。「教科に関する科目」の実質的必修科目は、上記の必修科目の合計13科目26単位に、卒業のための必修科目5科目10単位が加わって、18科目36単位である。この数は、「教科に関する科目」として必要な単位だけでなく「教科または教職に関する科目」として必要な単位まで含んでいる。この他にも選択の「教科に関する科目」を指定している。また、各分野においては、上記の必修科目を含め、2科目4単位以上の科目を履修できるようになっている。
⑤システム数理学科3、4年次の教育課程とそのねらい
本学科の学生は、主に3、4年次の専門教育の課程で、高等学校・中学校の数学教育に適用できる応用数学の専門知識を身につける。①で述べたとおり、本学科は、情報技術の進歩にも十分対応できるような数学・物理学を修得し、さらに、それらをもとにした応用数学を修得した人材を育成している。 主に3、4年次に配置された専門教育の課程では、数学を現実的適用である応用数学を経験する。たとえば、線形計画法、多変量解析では、線形代数、確率統計などの実際的適応を経験する。また、メーカーにおける品質管理やマーケティングにおいてもそういった応用数学を通して数学は活用されている。
これらの経験は、数学が抽象的で体系的であること、数学の実社会への適応、数学の文化への影響などの、数学のよさを具体例をとおして理解することにつながる。そして、「質」の高い数学教育へも結びつくはずである。ここで述べた、数学のよさ、および、「質」の高い数学教育は、高等学校学習指導要領解説数学編理数編の「高等学校における数学教育の意義」で述べられていることでもある。これらの意味で、本学科の専門教育の課程で、高等学校の数学教育に適応できる応用数学の専門知識を身につけることができる。