南山大学

 
指定
期間
秋学期
単位
年次
2〜4
担当者
江本 純
他の科目との関連
他学科履修
副題
講義内容  形態学は相同という概念をその基盤として成立する学問である。相同概念そのものは形態の構造や機能の類似性から議論されてきたが、生物の進化を土台とする中で、相同概念と形態の個体発生ならびに系統発生上の起源の問題が同時に論じられるようになり、形態学そのものが新しい局面を迎えつつある。この講義では、構造とは何か、機能はどのように成立するのかといった形態学の基本問題を、昆虫の多様な形態を通じて論じる。
講義計画  形態学は生物の形を単に記述する学問ではありません。形態学のもっとも重要な点は、形態の構造を明らかにし、その構造の成り立ち・由来を探求することにあります。講義は、私たち人間が『形』をつくっていくプロセスと、生物が遺伝子DNAの設計図に従って『体』をつくっていくプロセスにどのような違いがあるのかを明らかにしながら、生物の『かたちづくり』を学ぶことからはじめます。
 生物の『かたちづくり』は細胞分裂を手段にし、どこに何をつくるのかという全体と部分の位置関係を見事に実現している。しかし、さらによく観察すると、同じような『形』が並んでいることに気づきます。生物の体はたいへん複雑にできていると思いがちですが、実は意外に単純な構造の繰り返しであることが多いのも事実です。このことに最初に気づいたのはかの有名な文豪ゲーテでした。しかし、近代生物学は生物の形を自然選択により進化してきたものと考えてきました。確かに生物の形は進化してきたのですが、形態がどのような規律性をもって進化するのか、その全貌はまだまだ明らかにはされておりません。わたしたちは自然・生物(すべての事物といってもいいのですが)を体系的に理解しようとします。分類学(体系学:systematics)はその体系化のための学問です。

 1.私たち人間は『かたち』をどのように作るのだろうか。
   ある形をつくるプロセスを詳細に記述し、私たちの『かたちづくり』の計画性がどのようなものかを調べます。
 2.生物の体の『つくり』の特徴を調べる。
   生物の『かたちづくり』と私たち人間の『かたちづくり』の計画性にはどのような違いがあるのでしょうか。
 3.生物の形の概念、類似と相同を勉強します。
 4.生物が遺伝子DNAという設計図をもとに、どのように『かたち』を作っていくのかを見てみます。
   最近では『かたちづくり』の遺伝子がかなりたくさんわかってきました。意外なことにハエなどの昆虫から、私たち人間の体をつくる遺伝子は同じものであるということです。生物の『かたちづくり』は昆虫からヒトまで共通した基本設計図をもとに行われ、同じ遺伝子でハエではハエの頭、ヒトではヒトの頭をつくるのです。
 5.生物の『かたちづくり』の特徴を学んだ後、私たちは生物の『形』をこれまでどのように理解してきたかを、ゲーテの形態学から学んでみましょう。
 6.近代生物学のダーウィニズムでは『かたちづくり』をどのように理解するのでしょうか。ダーウィンの著書『種の起源』の一節を精読します。
 7.生物の『かたち』にひそむ歴史性を考えてみましょう。『かたち』にはその生物がたどったきた道筋が刻まれています。
 8.私たちが何かを認識するとき、必ず観察・分類を行っています。その過程で私たちは何を認識しようとしているのでしょう。分類学はただ単に形の異なるものを順番に並べているのではありません。分類学(systematics)はまさに体系学です。この講義の最後に体系学とはどんな学問か、そしてどのような発想で体系が作られているのかを見る中で、自然をどのように理解していくのかを学びます。
評価方法  講義はゼミ形式で行います。そのため参加者はディスカッションのためのレポートを準備・提出しなければなりません。評価はレポートの内容とディスカッションへの積極的な参加を基礎に行います。筆記試験は行いません。
テキスト  生物学教室で準備する資料のほかに、参考文献を紹介します。
その他