24371 日本文化史C
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選 |
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秋学期 |
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2 |
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2〜4 |
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阿部 泰郎 |
他の科目との関連 | |
他学科履修 | 可 |
副題 | 越境の精神史−日本の思想史や歴史学・文学において従来は特に対象にされなかった、秩序や体制から逸脱する存在に焦点を当て、その形象や様相を関連諸学を援用しながら精神史の視点で考察することにより、日本の文化伝統とエートスを再検討する。 |
講義内容 | 中世日本の世界では、国家や王権の体制秩序に反抗し、叛逆して滅びたり追放された人々が数多く登場する。むしろ文芸や伝承の領域では、そのような存在が英雄として現われ、主人公として活躍し、享受者がその運命に共感して涙するような作品が多く見いだされる。また、中世独特の“日本”という國家像とその境界を超越して、いわば外部の世界へ赴いたり、往還したりする存在や営みも、人々の記憶に深く印象を刻み込んでいる。そうした様々な次元での越境者と越境行為を日本文化のなかに探り、更にその深層にあって伝承像の再生産を支え背景となる宗教−神話の領域を、縁起や説話などのなかに尋ねる。その過程で、彼ら越境者を生み出し続ける神話的思惟や中世独自の心性をつかみ出してみたい。 |
講義計画 | 1、中世「日本」の境界とそれを越えた(越えようとした)英雄たち 現実の合戦では敗れて配流された勇士鎮西八郎為朝は、『保元物語』の最後で「鬼が島」を征服する。そのような物語が描き出そうとする日本国の境界領域とその成立を担う軍記などの英雄像を分析する。 2、“霊地”の誕生とそれを開く聖者たち 日本という領域をその根源において成り立たせる宗教的聖地と、その始源を自らの働きにおいて担う聖 者の境界超越の姿を、吉野・熊野など修験の霊地を拓いた役行者と密教の霊地高野山を開いた弘法太子空海など、聖者伝と縁起を素材として考察する。 3、中世越境者列伝−聖徳太子・文覚・義経・小栗など 中世の語り物である本地物語・軍記・幸若舞・説経の主人公たちが立ちはたらく上での越境の多様な姿を、それら物語の構造や基盤を分析し読み解くところから照らし出し、彼らの運命の転変を流離としてでなく、むしろ越境により獲得した特権として促えようとする。 |
評価方法 | 講義中に提示した課題によるレポートと平常点による総合評価 |
テキスト | 講義に際して当方でプリントを用意する (参考書)『聖者の推参──中世の声ヲコなるもの』阿部泰郎著 名古屋大学出版会(2001) |
その他 |