南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

憲法演習(2単位)

②担当者名

中谷 実

③科目の種類

法律基本科目・公法系

④必須の有無

必修

⑤配当学年・学期

2年(既修者コース:1年)・秋学期

⑥授業の概要

法学未修者2年次生と法学既修者1年次生に対し、憲法の重要テーマに関する学説、判例の検討を通じて、高度な法的分析能力および法的な議論を遂行する能力、さらに、判例、文献を自由に検索・収集し、読解する能力を身につけることをめざします。①受講者全員が毎回のテーマに関するテキストの該当部分を読んだうえで判例を精読しておいてください。②毎回、数人の学生が判例を報告します。適宜、事実の概要、原告側の主張、被告側の主張、裁判所の判断を分担して検討します。③最後に、全員で自分が裁判官ならばどのような判断をするか立場を明らかにし、相互に議論します。

⑦到達目標

本演習は、行政法演習とならび公法に関するブラッシュアップ科目として位置づけられます。それゆえ、本演習において、これまで、【憲法(人権)】、【憲法(統治)】、【憲法(憲法訴訟)】において学んできた知識の定着化をはかるとともに、判例研究を通じて、その事件の母体となっている訴訟形態や違憲審査基準を十分理解した上で、みずから上告趣意書や判決をかけるように努めます。

⑧成績評価の基準と方法

毎回の授業における積極的参加の熱意、定期テスト等の総合的評価。ただし、定期テストの割合を6割程度とする。

⑨教科書

中村睦男『憲法30講(新版)』(青林書院、1999)以下、中村と略す。

⑩参考文献・参考資料

佐藤幸治他『ファンダメルタル憲法』(有斐閣、1994)以下、佐藤と略す。

浦部法穂『事例式演習教室・憲法(第2版)』(勁草書房、1998

)以下、浦部と略す。

芦部信喜他編『憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ』(有斐閣、2000)以下、芦部と略す。

⑪履修条件その他の事項

 

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

④授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

1

人権の主体−−外国人−−

 

人権の享有主体という論点のなかでも、外国人の人権というテーマは、現在、定住外国人の地方参政権付与という問題があるだけに、重要な論点です。外国人の国政選挙権、地方選挙権に関する判例を取り上げます。

 

中村3

浦部2

芦部1-7

2

人権の主体----未成年者----

未成年者の人権がなぜ制限されるかを校則に関する判例を素材に考えます。

 

中村4

芦部22 26

3

平等権−−女子若年定年制−−

包括的基本権として類別される平等権にも種々論点がありますが、ここでは、性差別に焦点をあてながら、人権の私人間効力についても考えます。

 

中村5

浦部5

芦部11-13

 

4

平等権②−−議員定数不均衡訴訟他−−

選挙権は、主権者国民と国民の代表機関である国会とをつなぐ重要な権利であり、この権利が歪曲されては、民主主義は正常に機能しません。そこで、かつての定数不均衡訴訟や現在の小選挙区比例代表並立制の合憲性を争った判例を素材として検討し、民主主義の在り方について考えます。

 

中村8

浦部6

芦部155-159

5

政教分離の原則

宗教が人間性の奥深いところに根差し、また、西欧において信教の自由は、人権思想展開の起点となったということ、宗教の雑居性という我が国の宗教事情、神道が戦前の軍国主義と深い関係を持ったという歴史的事情、昨今の首相の靖国神社参拝などを考慮するならば、「政教分離」は、普遍的なテーマであり、かつ、今日的問題です。ここでは、目的効果基準を提示した津地鎮祭最高裁判決、その後の展開、さらに、愛媛玉串料訴訟違憲判決を素材に政教分離を考えます。

 

中村10

浦部11

芦部48-54

6

プライバシーと表現の自由

新しい人権といわれるプライバシーの権利も、判例を通じて自己情報コントロール権として定着しつつあります。ここでは、主要判例を検討しながら、その展開の過程や名誉毀損との違いについて考えます。

 

浦部13

芦部68-70

7.

職業選択の自由

 

職業は、その社会性ゆえ、種々の規制がなされ、多くの憲法訴訟が生じています。かつての公衆浴場判決、その後の、小売市場判決、薬事法違憲判決、さらに、その後の酒類販売の免許制に関する判決等を通じて、違憲審査基準が、公共の福祉論から目的二分論、さらに合理性の基準に変遷してきたことを明らかにします。規制緩和論との関係も考えます。

 

佐藤9

浦部23

芦部96-102

8

財産権の制限

職業選択の自由の領域と同じく、財産権の領域は、種々、規制がなされています。職業選択の自由と同じく経済的自由でありながら、目的二分論を採用しなかった森林法違憲判決、農地法の財産権規制が問題になった近年の事件も取り上げます。

 

中村19

浦部24

芦部103-104

 

 

9

確認テスト

 

 

 

10

生存権

 

社会権の代表ともいうべき生存権に焦点をあて、主要判例を検討しながら、その権利の性格や違憲審査基準についてみていきます。近年の社会保障政策の転換も念頭に置き、福祉国家、社会国家のあり方についても考えます。

 

浦部20

芦部137-139

11

教育権の所在

家永教科書裁判を通じて、国民の教育説と国家教育権説を対比させ、教育権の所在を考えます。

 

中村16

佐藤10

浦部19.

芦部94-95

12

違憲立法審査権の性格

違憲審査制の二大類型として抽象的審査制と付随的審査制があります。わが国では、後者として展開しており、憲法訴訟として成立するためには、事件性の要件を満たさなければならないとされます。しかし現実には客観訴訟といわれる住民訴訟が憲法訴訟において大きな役割をはたしています。事件性の要件をどの程度厳格に捉えるべきを考えます。

 

中村25

浦部37

佐藤23

芦部199

 

13

憲法判断回避のルール

 

かつてアメリカにおいてブランダイス判事によって憲法判断回避のルールが提示されました。これは、司法の自己抑制もしくは司法消極主義のスタンスを示したものです。このスタンスの妥当性について、恵庭事件を通じて考えま、す。

 

中村26

浦部40

芦部173

 

14

統治行為論

 

高度の政治性を有する国家行為の司法審査を慎むべきとする統治行為論があります。この理論の根拠、実際用いられた判例を検討し、そのあり方を考えます。

 

浦部38

芦部203-204

15

立法の不作為

 

国会の立法行為が違憲審査の対象となることはいうまでもありませんが、立法の不作為が違憲審査の対象となるかが問題となります。在宅投票制度廃止違憲訴訟他の判例を通じて、この問題を考えます。

 

佐藤24

浦部39

芦部205.