Ⅰ.授業の概要
①講義科目名(単位数) |
紛争解決(ロイヤリング)(2単位) |
②担当者名 |
加藤 良夫 |
③科目の種類 |
実務基礎科目 |
④必須の有無 |
自由 |
⑤配当学年・学期 |
3年(既修者コース:2年)・秋学期 |
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⑥授業の概要 |
法曹実務家とりわけ弁護士が身につけておかなければならない、面接、交渉、訴訟準備のための調査、証拠収集、合意文書の作成等の様々な技能の習得をめざします。特に面接技法は、依頼者から紛争解決に向けて必要な事項を聴き取る際に不可欠なスキルであるばかりでなく、依頼人との信頼関係を形成していく上でも極めて重要です。 このような観点から、カウンセリングマインドの涵養も視野に入れつつ、具体的なテキスト教材を基にロールプレイ、ビデオ等を活用して面接技法、交渉技法を習得しやすく工夫します。又、いくつかの事例で必要となる証拠をどのようにして集めていくのかということについて、エクスターンシップやクリニックとも連携を図って実践的に学ぶ機会を提供したいと思います。 |
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⑦到達目標 |
実務基礎科目群の中の一つの科目として、法曹実務家とりわけ弁護士に必要な諸々の基本的技能の習得を目標とします。 |
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⑧成績評価の基準と方法 |
この科目の中で学んだ基本的技能の基礎の習得の度合いを基準とします。評価方法としては、ロールプレイや文書作成等を通して評価します。 |
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⑨教科書 |
名古屋ロイヤリング研究会編『ロイヤリング講義』(民事法研究会、2004年) |
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⑩参考文献・参考資料 |
日弁連業務対策委員会編『法律事務所経営ガイド』(弘文堂、1995年) |
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⑪履修条件その他の事項 |
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Ⅱ.授業計画
回 担当 |
①テーマ
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授業内の学修活動 |
④授業時間外の学修活動等 |
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②ねらい・内容 |
③授業方法・工夫 |
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1 |
初回面談前の事前スクリーニング |
初回面談をするかどうかを判断する上で有用な「聴き取りカード」の活用を学びます。事案が複雑である時、経過が長い時、専門分野にかかわる時には、予め依頼者に経過を時系列に記してもらうことが有効であること及び、その具体的なフォーム、内容について学習します。 |
「聴き取りカード」の現物を示し、その活用法を具体的にイメージできるようにします。 |
予めテキストの該当箇所及び参考書等を学習してくることが求められます。(以下同じ) 法律相談を求める手紙文の中から、面談ではさらに何を聴き取りするかについて書き出してくることが求められます。 |
2 |
初回面談の基本技術 |
初回面談をする際の心得(カウンセリングマインド)と技術を学びます。初回面談は信頼関係を形成する上でも極めて重要です。相手の話に対して共感的態度、話しやすい態度を持って詳細を聴き取っていく技法を学びます。 |
ロールプレイを通して相談に来た者の気持ち、相談を受ける時の心構えを具体的に体得します。 |
面接時のビデオを予め見ておくことと、「聴き取りカード」を基にどのように聴き取るかについて心積もりをしてくることが求められます。 |
3 |
調査受任の方法 |
事件の見通しを立てるための「調査」の重要性を依頼人に伝える技術を学びます。しっかりとした調査が事件へのアプローチの第一歩であり、事案に即してどのような調査が必要となるのかを学習します。 |
ロールプレイを通して、調査の重要性を相手に伝える技術を学びます。 |
具体的な設例を基にして、さらに何をどのように調査する必要があるのかについて書き出してくることが求められます。 |
4 |
文献調査の方法 |
専門的な知見を要する事案に関する調査、学習の方法を学びます。医学文献等の調査収集の方法とそれらの読み方(時代背景、論文としての価値等)について学習します。 |
キーワードを基に、ジョイス等を用いた文献検索の方法を実際に実践します。 |
ある専門的な概念について文献を調べてくることが課題として出されます。 |
5 |
証拠保全の基本技術 |
証拠保全手続について実践的に学びます。本人の陳述書、証拠保全の申立書、付属書類、疎明資料、上申書等の作成上のコツとポイントと、検証前の準備と当日の方法について学習します。 |
証拠保全の申立書、決定書のひな型を示し、実務上の手続を興味深く学べるように工夫します。 |
陳述書を基にして証拠保全の申立書を起案してくることが求められます。 |
6 |
調査報告の技術 |
調査結果とりわけ依頼人にとって不都合な事実と見通しを、いかにして依頼人に伝えるかを学びます。特に思い入れの強い人に対し、どのような態度で接するべきか等を学びます。 |
ロールプレイ方式で実際に模擬体験することにより理解を深めます。 |
予めロールプレイ用のシナリオ教材を読んでくることが求められます。 |
7 |
示談交渉受任時の基本技術 |
相手方との示談交渉に入るに当たって依頼人との間で目標を確認しあうことの重要性を学びます。示談交渉の見通しについての伝え方、とりわけ当方と相手方との立場の違いを踏まえて、見通しを断定的に伝えることの危険性を学習します。 |
ロールプレイを行って、示談の見込みを甘く伝えたためにどれほど信頼関係の維持が困難になったかを学べるようにします。 |
予めロールプレイ用のシナリオ教材を読んでくることが必要です。 |
8 |
示談交渉の基本技術 |
相手方との示談交渉をする際に必要な技術を学びます。依頼者と相手方がそれぞれ何にこだわっているかを踏まえて、妥協点を探る技術を学びます。 |
二つの異なる立場の意向をもとに、妥協点の探り方について議論をします。 |
予め対立する具体的な二本の陳述書をもとに、どのように示談交渉を進めていったらよいかを検討してくることが求められます。 |
9 |
示談書作成の基本技術 |
示談書に盛り込むべき条項の書き方を学びます。紛争の様相ごとに示談条項の中に何をどのように書き込むのか、その条項が将来的にどのような役割を果たすのかについて学習します。 |
交渉によって合意できた事柄を下に示談書を作ってみます。それらをもとに検討し合います。 |
合意できた内容を書いた陳述書から示談書を作成してくることが求められます。 |
10 |
調停、「あっせん・仲裁センター」の利用の方法 |
裁判以外の解決の場の存在とその利用方法を学びます。調停や名弁の「あっせん・仲裁センター」等のADRの概要とそれらの業務内容を学習します。 |
事案によりどのようなADRを利用するのがよいかを検討します。 |
ADRのホームページの一覧を示し、それらにアクセスして学習してくることが求められます。 |
11 |
訴訟受任時の契約書作成の基本的技術 |
訴訟受任時の委任契約(報酬契約)の方法を学びます。信頼関係の重要性を踏まえ、弁護士と依頼者との間で取り交される契約書の大切さ、その内容、意味について学習します。 |
委任契約書のひな型を示し、各条項の意味を具体的に検討します。 |
弁護士業務及び民法の委任の規定を踏まえ、弁護士と依頼者の間で取り交される契約書のイメージを予め具体化してくることが求められます。 |
12 |
陳述書作成の基本技術 |
陳述書を作成する際のポイントを学びます。依頼者の話す内容を基にして、要点を陳述書の形で作っていく方法を学習します。 |
ロールプレイをすることによって、聴き取りメモから陳述書を実際に作ってみます。 |
予め示された事案の概要を読み、依頼者からの聴き取りメモを作成してくることが求められます。 |
13 |
尋問技術 |
法廷における本人尋問の際の心得と技術を学びます。主尋問の準備と反対尋問への備えとして、尋問メモを作成することの重要性を実践的に学習します。 |
陳述書を基にして尋問メモを作成し、模擬法廷で尋問を体験してもらいます。 |
尋問技術に関する本を予め読んでくることが必要です。 |
14 |
裁判上の和解の基本技術 |
裁判上の和解をする際の心得と技術を学びます。紛争を和解で終了させるについては依頼人の納得理解が不可欠であり、判決の予想との関連性もあります。和解後に紛争が生じないために留意すべきこともあります。 |
和解後に不満が表明された具体例をもとに何が足りなかったかをディスカッションします。 |
和解条項のいくつかを示し、それぞれの意味、内容、背景について検討してくることが必要です。 |
15 |
依頼者への報告の基本技術 |
特に不満足な結果についての依頼人への説明・報告の心得と技術を学びます。依頼人が不満足な結果を受け入れるためには、弁護士がそれまでベストを尽くしてきたことが必要です。その上に立ってどのように向き合って言葉をかけていくべきかを学習します。 |
弁護士と依頼者とのやり取りを記録した良い例、悪い例のビデオを見て共に考えることができるようにします。 |
「人が説得されるのはどういう時か」というテーマについてレポートを提出することが求められます。 |