南山大学

 
指定
期間
春学期
単位
年次
2〜4
担当者
中野 智章
他の科目との関連
他学科履修
副題 オリエントのイメージ:近代ヨーロッパに現れた古代エジプト
授業概要  ナポレオンの遠征(1798)に端を発するエジプト学の誕生(1822)は、近代ヨーロッパの文化や社会に多大な影響を及ぼした。ヨーロッパにとっての「オリエント(東洋)」とは「オクシデント(西洋)」の対局を意味し、背景には、サイード(1935ー2003)が述べた「西洋の東洋に対する優越・支配意識」、いわゆる「オリエンタリズム」が存在したとされる。産業革命後のイギリスにおける余暇の増大や社会制度の整備、フランスにおける自由や平等といった観念の発達など、様々な社会変革の中で「オリエント」が近代ヨーロッパの形成に与えた影響を、古代エジプト文明に関する研究・知識の増大と併せて論じてみたい。
学修目標  人類が培ってきた文化の発展・変遷を、地域間の接触という巨視的な視点から読み解く力を養うのが本講義の目標である。キリスト教や仏教、イスラム教といったいわゆる世界三大宗教の成立に寄与したオリエント地域は、近代ヨーロッパにおいてどう理解され、如何なる影響を与える(単に搾取されたと見るだけでなく)に至ったのか。一例として、考古学や碑銘学、美術史学等の進展から得られた古代エジプトに関する知識がどのように受け止められ、用いられたのかを、様々な角度から捉えてみたい。
授業計画 1.イントロダクション
2.ナポレオンのエジプト遠征:『エジプト誌』の出版(1799)
3.エジプト風建築の流行:ロンドンのエジプシャン・ホール(1811)
4.象形文字の解読:エジプト学の誕生(1822)
5.博物館の誕生:大英博(1834)やルーブル(1847)におけるオリエント展示の出発
6.都市のシンボルとしてのモニュメント:パリ(1836)とロンドン(1878)のオベリスク
7.万国博覧会とオリエント:水晶宮(1851)とグラン・パレ(1900)
8.エジプトとフランス:世紀の大事業スエズ運河の完成(1869)
9.エジプト・ブームの火付け役:考古学者マリエット原作の歌劇『アイーダ』初演(1871)
10.観光産業の誕生:トーマス・クック社のエジプト旅行(1869)
11.東洋学(オリエンタル・スタディーズ)の設置:学問対象としてのオリエント
12.近代美術に現れたオリエント:デューラーからドラクロワまで
13.オリエントとヨーロッパ
14.まとめ
 以上の項目に沿って講義を進める予定である。
評価方法  平常点と筆記試験の双方で評価する。初回に授業の進め方や評価方法等についてオリエンテーションを行うので、受講者は必ず出席のこと。
テキスト  取り扱う対象は多岐にわたるので、適宜参考文献を紹介し、プリントを配布する。
その他  講義では、デジタルカメラ映像やビデオ・DVDなど各種視聴覚教材も用いて、受講者の理解を助けるよう配慮する。