【科目コード】97703
【科目名称】経営戦略の歴史的展開
【担当者】
【単位数】2 【配当年次】1秋・2 【開講期】春学期
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【授業概要】
本科目は、トヨタグループを例に、先ず企業経営戦略とその実践を史実にもとづき丹念にレビューする中から、経営戦略を規定する基本的要素を実証的に明らかにする。
それを受けて、トヨタグループの将来を規定する経営課題をとりあげ、その解決にむけた取り組みについて戦略経営計画の視点からアセスメントを試みる。すなわちこれまでの成功体験を裏付ける戦略として一貫して守るべき基本と、新たな環境の下でブレークスルーすべき戦略的要素とを峻別し、「これからの経営戦略」の再構築を試みるものである。
【到達目標】
健全で手堅い経営スタンスを基本に高いパフォーマンスを実現し、企業を取り巻くステークホルダーの長期的な利益に貢献する「経営戦略発想法」を身につける。
【授業計画】
1.
イントロダクション (その①)
日本の自動車産業の特質を理解するとともに、基幹産業としての責任を経済社会との関わりにおいて捉える。
2.
イントロダクション (その②)
1980年代のアメリカを例に、生産拠点の海外移転、M&Aと株主利益偏重がもたらした産業空洞化による国内生産基盤の崩壊、さらにはアメリカ経済、社会にもたらした困難を明らかにする。
3.
製造系列(グループ)政策
系列の形成過程を歴史的にレビューする中から、調達戦略の基本的枠組みを解明する。
4.
応用演習(1)
一般に「系列支配」の視点から製造系列政策に関する様々な批判がある。こうした批判について受講者はどのように考えるか。それぞれの考え方をまとめた上で、それをもとに全員でディスカッションを行う。
5.
販売系列(フランチャイズ)政策
販売ネットワークの形成過程を歴史的にレビューする中から、フランチャイズ政策の基本的枠組みを明らかにするとともに、製造系列との経営政策の一貫性を解明する。
6.
財務戦略 — カネ① —
トヨタの財務戦略を歴史的にレビューする中から、その形成過程における特徴を明らかにする。次いでそうした文脈の上に現代の「原価管理システム」を位置づけ、その財務戦略の基本的枠組みの解明を試みる。
7.
応用演習(2)
受講者は任意の企業グループを選択し、トヨタの財務戦略との比較を試みる。それぞれの特徴を整理した上で、検討結果をもとにこれからの所属企業、組織における財務戦略のありかたについてプレゼンテーションを行う。
8.
一段のコスト競争力の向上をめざす系列政策 — カネ② —
日本はグローバルな生産拠点として、21世紀も意味を持ち続けることができるのか。この問いに答えるための取り組みを観察する中から、グローバル化に向けた製造系列政策の洗練に向けた道筋の解明を試みる。
9.
応用演習(3)
「乾いたタオルを絞る」という批判がある。この指摘について受講生それぞれの考え方をまとめ、全員でディスカッションを行う。
10. 商品政策 — モノ —
商品戦略の類型を整理するとともに、とくにフルラインメーカーに焦点を絞り、トヨタの事例をもとに、効果的な商品開発戦略のありかたを検討する。(2005年オープンのレクサス戦略にも言及する。)
11. モノ造りのパフォーマンスを支える「技能」 — ヒト —
人すなわち「技能」という視点から、その形成と伝承に向けた人事、労務を明らかにする。
12. 応用演習(4)
トヨタの生産現場の人事、労務政策を批判する文献が散見される。受講者が選定した任意の文献についてその論点をまとめ、それをもとに全員でディスカッションを行う。
13. コーポレート・ガバナンス
バランスのとれた経営を実現するために考慮しなければならないことは、経営を取り巻く様々なステークホルダーへの適正かつ公正な利益配分であり信頼関係の強化である。これまでの講義を総括する中で、この課題に対応すべき基本スタンスとガバナンス政策のあり方を明らかにする。
14.
応用演習(5)
「トヨタの経営戦略上の弱み」はどこにあるのか、これまでの講義ならびに演習をもとに、様々なステークホルダーの視点から、受講者各自でトヨタの戦略経営計画の歪みを分析するとともに、「ハーモニアスな成長を持続するためのトヨタの課題」をテーマに、全員でディスカッションを行う。
【評価方法】
授業計画に示す5回の応用演習レポートと試験に代わるレポートにて評価。
(応用演習当日業務等で出席できない場合にも、演習課題に関わるレポートを提出すること)
配点:(応用演習課題レポート内容10点 + 発言など参加態度5点) × 5回
試験に代わるレポート25点
【テキスト】
授業の都度、詳細なレジメを配布
【参考文献】
必要に応じて最新の文献を指示
【備考】
受講者の研究課題、関心の所在および理解度に即して、授業の進度ならびに
各項目への重点配分等については、柔軟に調整見直しを行う。