Ⅰ.授業の概要
| ①講義科目名(単位数) | 民法(担保法)(2単位) | ②担当者名 | 清原 泰司 | 
| ③科目の種類 | 法律基本科目・民事系 | ④必須の有無 | 必修 | 
| ⑤配当学年・学期 | 1年(既修者コース:免除)・秋学期 | ||
| ⑥授業の概要 | 本授業科目は、債権担保の方法である物的担保、人的担保およびその他の担保的機能を持つ制度を対象とします。 物的担保とは、債務者または第三者(物上保証人という)が提供する財産(通常は特定財産=不動産、動産、権利などの目的物)の交換価値を把握し、債務不履行の場合に、その財産から優先的に弁済を受けることができる担保方法であり、民法典が定める典型担保(留置権・先取特権・質権・抵当権)と、民法典に定められていない非典型担保(譲渡担保権・仮登記担保・所有権留保・リースなど)があります。人的担保とは、債務不履行の場合に、債務者以外の第三者の一般財産に対して強制執行できるようにしておく担保方法であり、民法典が定める保証債務、連帯債務などです。その他の担保的機能を持つ制度(事実上の担保)として、債権譲渡担保・相殺・代理受領・振込指定などがあります。 授業は、原則として、以下の順序で行います。 1 教科書の予習範囲内について必要最低限度の講義をします(この講義を省き、直接、次の2に入ることもあります)。 2 教科書の記述、各テーマについての重要判例や参考書等の文献を素材として、質疑応答や受講生間で議論を行います(判例等の資料は事前配布しますので、当然、その予習をしておくことが求められます)。 3 基本事項・重要事項の確認を行います(適宜、テーマの区切りで小テストを行います)。 | ||
| ⑦到達目標 | 本授業科目は、法学未修者を対象とする法律基本科目ですが、民法の「担保物権法」と「債権総論」の分野を対象とするため、民法総則・物権法・契約法などを基本的に理解していることが必要です。そのような基本的理解を前提として、以下の目標を目指します。 1 債権担保の各種法制度の趣旨や法律用語を理解する。 2 具体的設例を通して、債権担保の各種法制度が、現実社会においてどのように機能しているかを理解するとともに、またそれぞれの相互関係をも理解する。 3 重要判例や学説を検討することにより、どのような法的論点が存在し、何が議論されているかを理解する。 4 以上の理解を踏まえて、債権担保をめぐる法的紛争に対する解決能力を獲得する。 | ||
| ⑧成績評価の基準と方法 | 授業への参加度(発言頻度・内容、小テスト、レポート)40%、期末試験60% | ||
| ⑨教科書 | 平野裕之ほか『民法3 担保物権[第2版](有斐閣アルマ)』(有斐閣、2005年) 野村豊弘ほか『民法Ⅲ 債権総論[第3版](有斐閣Sシリーズ)』(有斐閣、2005年) | ||
| ⑩参考文献・参考資料 | 内田貴『民法Ⅲ[第3版]債権総論・担保物権』(東京大学出版会、2005年) 清原泰司ほか『民法2 物権・担保物権』(不磨書房、2006年) 小林秀之・山本浩美『担保物権法[第3版]』(弘文堂、2004年) 清原泰司『物上代位の法理』(民事法研究会、1997年) | ||
| ⑪履修条件その他の事項 | 特になし | ||
Ⅱ.授業計画
| 回 担当 | ①テーマ | 授業内の学修活動 | ④授業時間外の学修活動等と   予習の視点(予定) | |
| ②ねらい・内容 | ③授業方法・工夫 | |||
| 1 | 担保法の概観・担保物権総論 | (1)債権回収法としての担保法の概観—物的担保(担保物権)・人的担保および事実上の担保 (2)担保物権の性質と効力の理解  |  | 教科書・平野ほか『民法3担保物権[第2版]』の予習範囲—pp.1〜22 | 
| 2 | 抵当権の効力(1) | (1)抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲の理解 (2)抵当権の侵害に対する効力の理解 | 判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.23〜72 | 
| 3 | 抵当権の効力(2) | 抵当権の物上代位の意義・客体—成立要件と現実の機能、先取特権の物上代位についても理解 | 判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.73〜82 | 
| 4 | 抵当権の効力(3) | 抵当権の物上代位権行使の要件—差押えの意義に関する学説・判例の理解、先取特権の物上代位権行使との比較 | 判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.82〜92 | 
| 5 | 抵当権の効力(4) | 物上代位の総括 | 学説・判例の検証 | 同上 | 
| 6 | 優先弁済権の実現 | 担保不動産競売・担保不動産収益執行の格制度の理解 |  | 同上教科書・予習範囲—pp.93〜113 | 
| 7 | 抵当権と利用権の関係 | (1)平成15年民法改正—短期賃貸借保護制度廃止の理由、抵当権者の同意による賃借権存続・抵当建物競売後の建物使用者の引渡し猶予の各制度の理解 (2)抵当権と占有権原に関する判例の理解 | (1)抵当権制度改正の趣旨の理解 (2)判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.131〜139 | 
| 8 | 法定地上権 | 法定地上権の成立要件、一括競売制度の理解 | 判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.139〜154 | 
| 9 | 抵当不動産の第三取得者・抵当権の処分・抵当権の消滅 | 平成15年民法改正—抵当権消滅請求制度の理解 |  | 同上教科書・予習範囲—pp.155〜177 | 
| 10 | 共同抵当・根抵当 | 共同抵当権の実行、物上保証人または第三取得者との関係、根抵当の意義の理解 | 判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.114〜130、pp.178〜190 | 
| 11 | 質権・法定担保物権 | (1)抵当権との比較を通して質権の特質を理解  (2)法定担保物権である留置権・先取特権の効力・現実社会での存在意義の理解 | 判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.191〜215、pp.281〜334 | 
| 12 | 非典型担保 | (1)非典型担保の概観  (2)譲渡担保の法的構成・動産売買先取特権と集合動産譲渡担保の競合に関する学説・判例の理解 | 判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.216〜263 | 
| 13 | 担保的機能を持つ制度(1) | 債権譲渡担保、相殺、代理受領、振込指定の概観 | 判例の検討 | 同上教科書・予習範囲—pp.264〜280 | 
| 14 | 担保的機能を持つ制度(2)  | 債権譲渡と債務引受、相殺の現実の機能と学説・判例の理解 | 判例の検討 | 教科書・野村ほか『民法Ⅲ—債権総論[第3版]』の予習範囲—pp.154〜183、pp.223〜233 | 
| 15 | 人的担保 | 多数当事者の債権関係—連帯債務・保証債務、連帯保証、共同保証、根保証の各制度の理解 |  | 同上教科書・予習範囲—pp.105〜153 |