【科目コード】97665
【科目名称】日本的労使関係
【担当者】
【単位数】2 【配当年次】1秋・2 【開講期】秋学期
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【授業概要】
本科目では、「日本的労使関係」を持続、発展させるために必要とされる労務管理能力、あるいは組織管理能力を深化させることをめざしている。
先ず、日本を代表するトヨタ自動車の労使関係を事例として、その歴史的形成過程をレビューする中から、その本質と基本的構成要件を明らかにする。次に、労使をとりまく現代の様々な課題への取り組み事例をもとに、受講者とのディスカッションを通して問題の所在と解決にむけた実践的な道筋を考える。
【到達目標】
日本の労働組合運動と労使関係のイノベーションを推進する労使のリーダーが、日本の労働運動と労使関係の原点すなわちその「あるべき姿」正しく認識すること、さらには、改革の出発点とも言うべき「現状とのギャップ」をきちんと理解できる能力を身につけることをめざす。
【授業計画】
1. なぜトヨタは「日本的労使関係」のモデルたりえるのか
「日本的労使関係」の定義を巡る研究成果をレビューする中から、日本的労使関係を代表するモデルとして「トヨタの労使関」を選定する必然性を確認する。
2. トヨタの労使関係に対する様々な批判
トヨタの労使関係に対しては、その公正さに関する様々な批判がある。客観的史実をもとに、これら様々な誤解を正す。
3. 応用演習(1)
果たして、トヨタの労使関係は「日本的労使関係」の代表事例として的確であろうか、またその公正性を主張しえるのであろうか。受講生が、それぞれに考案をまとめ全員でディスカッションする。
4. 草創期の労働組合と労使関係
トヨタの労使関係の原点、すなわち「労使相互信頼・協調」、「企業別組合」の基本的枠組みの確認と、その成立の必然性を確認する。
5. 1950年「トヨタ大争議」の意義
争議発生の真因を明らかにするとともに、その終息に向けた労使の戦略解析。本争議の意義とその後の労使関係を大きく規定する要素を抽出する。
6. 運動路線転換 — 組織戦略の原点を確認 —
大衆運動の特質を理解するために、争議終息後の一段の左傾化を経て、創設の原点復帰への変化をレビューする。その上で、そうした中でのリーダーの戦略的思考と苦悩を明らかにするなど、トヨタ労働組合創設の原点への復帰、すなわち「労使相互信頼・協調」、路線への転換に向けた組織戦略の生々しい実体を解明する。
7. 応用演習(2)
受講者が、人事担当責任者あるいは労働組合リーダーの立場から、トヨタの争議終結に向けた戦略を評価し、その結果を持ち寄り全員でディスカッションを行う。
8. 路線定着に向けた政策の検証と1962年「労使宣言」の意義
労使それぞれが「協調的労使関係」の定着、浸透に向けて取り組んだ政策をレビューするとともに、併せて、そうした取り組みを経て締結された「労使宣言」の意義を確認する。
9. 応用演習(3)
受講者が、人事担当責任者あるいは労働組合リーダーの立場から「労使宣言」への調印の意義を考察し、その結果を持ち寄り全員でディスカッションを行う。
10. 規模の拡大と労務構成変化への適応政策の検証 — 労務政策の視点から —
11. 同、 — 労働運動の視点から —
モータリゼーションの中で、従業員規模、出身地が急激に拡大する中で、「協調的労使関係」が、いかにして組織内に浸透し、従業員からも支持されていったのであろうか。労務政策の視点と労働運動の視点から、その政策の検証を試みる。
12. 以上の歴史的過程を経て形成されたトヨタの労使関係の「基本的枠組」と「運用戦略」の原点を確認する。
13. 21世紀に向けた新たな船出
トヨタ労使は、労働組合創立50周年を機に、1996年、従来の労使宣言を発展させる「21世紀に向けた労使の決意」を労使で確認、調印している。1962年「労使宣言」との相違を解析し、1996年宣言の意義を確認する。
14. 応用演習(4)
受講者が、最近の労働組合の取り組みあるいは労使関係に関わる事例から、これまでの講義を通して理解された「あるべき姿」とのギャップを解析し、その発生の要因とあるべき姿の回復にむけて労使それぞれが取り組むべき課題を持ちより、受講者全員で検討する。
15. 総括ディスカッション
【評価方法】
授業計画に示す4回の応用演習レポートと試験に代わるレポートにて評価。
(応用演習当日業務等で出席できない場合にも、演習課題に関わるレポートを提出すること)
配点:(応用演習課題レポート内容10点
+ 発言など参加態度5点)
×
4回
試験に代わるレポート40点
【テキスト】
『トヨタ労使マネジメントの輸出』ミネルヴァ書房、2005年
その他、授業の都度必要な資料をレジメとして配布
【参考文献】
必要に応じて最新の文献を指示
【備考】
受講者の研究課題、関心の所在および理解度に即して、授業の進度ならびに
各項目への重点配分等については、柔軟に調整見直しを行う。