【科目コード】97623
【科目名称】外部監査
【担当者】柴田 和範
【単位数】2 【配当年次】1秋・2 【開講期】秋学期
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【授業概要】
2005年9月13日公認会計士業界を揺るがす大事件が発生した。カネボウの粉飾決算は日本の四大監査法人のひとつである大監査法人に所属する四人の公認会計士の逮捕に発展し、翌年においてその大監査法人は破綻した。米国においても2002年エンロン社の監査に失敗した世界五大監査法人のひとつが破綻した。この講義では公認会計士の中心的な職務である財務諸表監査が社会に果たす役割を理解し、公認会計士に求められる資質、倫理観を理解する。又、金融商品取引法監査や会社法監査を中心に法制度の仕組みを理解する。
また、当年度より法制度としてのレビューがスタートとした。そこで、財務諸表監査だけでなく、システム監査、Trustサービス、レビューなど各種の類似の業務・行為も存在する。こうしたものとの比較もしながら、外部監査全体について、理解できるフレームワークを提供できるような授業を考えている。また、監査の現場において生じる様々な事情もトピックな粉飾事件なども織り交ぜながら検討していく。
【到達目標】
財務諸表監査における基本的な概念の理解と実務における監査の実施プログラムを理解することを目標とする。さらに今日の監査がかかえている問題を蓋然的に理解する。
【授業計画】
1.
監査に対する期待ギャップとは?
監査の失敗?社会が公認会計士に期待する監査とは何か?会計士は期待ギャップを埋めるべく努力をしているか?
2.
独立性の問題とは?
会計士は監査対象の会社から直接お金をもらって監査できるのか?会計士の倫理観とは?監査法人の交代制度をどのように考えますか?
3.
内部統制とは?
内部統制と財務諸表監査の関わりを歴史的に考察する。COSOの内部統制概念とは?
4.
会社法が役員に求める内部統制構築責任とは?
大和銀行NY支店の事件をベースに考える。
5.
監査手続きとしてのリスクアプローチとは?
リスクアプローチ監査の概要について 固有リスク・統制リスク・重要な虚偽表示のリスク概念の理解
6.
監査調書の作成
中小監査法人はどのように監査調書を作成しているか?監査計画書の作成事例
7.
内部統制報告制度と内部統制監査について
本年よりスタートした内部統制報告制度と内部監査制度の概要と理解
8.
公認会計士及び監査法人に求める品質管理基準とは?
監査の品質保持のためにどのような管理体制が組まれているか?金融庁の公表事例を考える
9.
会社法の監査を考える。
コーポレートガバナンスの理解。監査役監査制度を考える?監査委員会制度を考える。我が国独自の会計参与制度とは何か?
10. 会計制度の発展は企業の決算発表にどのような影響をあたえたのか?
V字型回復とは何か?大きな決算数値のブレを伴う新会計制度と将来予測情報の監査との関係性
11. ゴーイングコンサーンに関する問題?
監査期待ギャップをうめるべく一つの解決がゴーイングコンサーン情報の開示であった。情報開示後突然死はなくなったのか?また新たな期待ギャップの可能性はないのか?
12. 粉飾決算の動機と粉飾の手口を考える
あなたならどのような手口を考え粉飾するのか?
13. 粉飾事例研究
ある粉飾事例に的をしぼり考察する。
14. 粉飾事例研究
第13回につづき異なる粉飾事例の研究
15. 公認会計士監査に期待すること
あらたなレビュー制度を考える。会計士の情報保証機能を考える。あらたな期待ギャップ問題を考える
【評価方法】
出席 20%
レポート 40%
クラスへの貢献度(クラスディスカッション) 40%
【テキスト】
吉見 宏(著) 『ケースブック 監査論第4版』 新世社 2008年
【参考文献】
千代田邦雄(著) 『現代会計監査論』 税務経理協会 2008年
竹村 純也 『これならわかる会計監査−道具としての会計入門』 日本実業出版社 2008年
八田 進二 『逐条解説 改定監査基準を考える』 同文館出版 2007年
東 誠一郎 『将来予測情報の監査』 同文館出版 2007年
稲村 義憲 『内部統制評価実践マニュアル』 税務研究会 2007年
千代田邦雄 『アメリカ監査論第2版』 中央経済社 2005年
高橋 篤史 『粉飾の論理』 東洋経済 2006年
種村 大基 『監査難民』 講談社 2007年
田中 慎一 『ライブドア監査人の告白』 ダイアモンド社 2006年
浜田 康 『会計不正−会社の「常識」監査人の「論理」』
日本経済新聞社 2008年