【科目コード】97531
【科目名称】ビジネス経済学
【担当者】湯本 祐司
【単位数】2 【配当年次】1 【開講期】秋期隔週
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【授業概要】
ビジネス上の意思決定問題を考えるための基礎として、主としてミクロ経済学を講義する。特に、ゲーム理論と情報の経済学を重視する。これは、現実的には、企業を取り巻く環境は戦略的であり、かつ、情報非対称であるからである。いわゆる通常の「経済学」の講義と異なる点は、いかに企業の利潤を大きくするか、そのために経済学的な知識をどう生かすか、ということに重点を置くところである。例えば、「費用構造が同一であり、同質な財を提供する複数の企業が価格競争をおこなった場合、それぞれの企業は利潤を得ることはできない」という、いわゆる「ベルトランの罠」を講義する際、通常の経済学の講義では、「そのことによって社会的厚生は最大化されるので望ましい」という結論で締めくくられるが、この講義は、「だからこそ、費用上のアドバンテージを得るための技術革新や、製品差別化が重要なのである」という、経営戦略の文脈に沿った結論を提供する。
【到達目標】
ゲーム理論や情報の経済学を含めてミクロ経済学の基本的考え方、基本用語および入門・中級レベルの分析手法を理解し、ミクロ経済学の考え方を経営現象の理解や企業の意思決定に適用することが可能となる基礎的な力を身につけることを目標とする。
【授業計画】
1.
市場構造の分析枠組
(1) 市場構造の規定要因 (2) ポーターの5つの競争要因 (3) バリューネット (4) 産業の境界
2.
需要の特性
(1) 需要を規定する4つの要因 (2) 価格効果、交差価格効果、所得効果
(3) ミクロ経済学における消費者行動理論 (4) 消費の外部性 (5) ネットワーク外部性
(6) ハードとソフトの相乗効果
3.
費用の規定要因
(1) コスト優位の要因 (2) 費用の基礎概念 (3) ミクロ経済学における生産理論
(4) 規模の経済 (5) 経験の経済(経験効果) (6) 範囲の経済
4.
独占
(1) 独占とその要因 (2) 独占企業の利潤極大化
(3) 価格設定の公式 (4) 価格支配力
(5) 社会的余剰
5.
ゲームと戦略(1)
(1) ゲームの構成要素 (2) 標準型ゲームと展開型ゲーム (3) 支配戦略、被支配戦略
6.
ゲームと戦略(2)
(1) 最適反応戦略とナッシュ均衡、(2) 展開型ゲームとゲームの木 (3) 部分ゲーム完全均衡
(4) 参入ゲーム
7.
ゲームと戦略(3)
(1) 繰り返しゲームと協調の成立 (2) 囚人のジレンマとアクセルドットの実験
(3) 不完備情報ゲームとその応用
8.
寡占と競争
(1) クールノーの数量競争 (2) ベルトランの価格競争とベルトランの罠
(3) エッジワースの価格競争 (4) 供給能力と価格の2段階ゲーム (5) 差別寡占の競争モデル (6) 戦略的代替と戦略的補完
9.
中間試験(範囲は7.「ゲームと戦略(3)まで)
10.
競争戦略の分類
(1) 競争戦略の2段階モデルと戦略の分類 (2) コスト優位の戦略 (3) 広告投資 (4) 互換性戦略 (5) 柔道エコノミクス (6) 価格競争回避戦略
11.
価格戦略・製品戦略
(1) 価格差別の基礎 (2) グループ別価格差別 (3) 自己選択による価格差別
(4) 二部料金制、数量割引、ブロック料金 (5) ダイナミック・プライシング
(6) オークション (7) 製品バンドリング戦略
12.
情報の非対称性とインセンティブ(1)
(1) 情報の非対称性 (2) 非対称性情報による問題−逆選抜とモラルハザード
(3) モニタリング、シグナリング、スクリーニング
13.
情報と非対称性とインセンティブ(2)
(1) インセンティブとは (2) チームの理論 (3) エージェンシーの理論
14. 企業の境界(1)
(1) 企業の水平境界 (2) 企業の垂直境界 (3) 取引費用の経済学
15. 企業の境界(2)
(4) 所有権アプローチ (5) 水平合併 (6) 補完合併 (7) 企業の組織構造
【授業時間外の学習(準備学習など)】
テキスト・配布資料の予習・復習。予習・復習問題を解く。
【評価方法】
筆記試験 50%
中間試験 25%、期末試験 25%
提出物 30%
ホームワークの提出
クラスへの貢献度・グループワーク20%
授業中のディスカッション・グループワークへの参加態度や発言内容
【テキスト】
丸山 雅祥『経営の経済学』有斐閣、2005年。
【参考文献】
淺羽茂『経営戦略の経済学』日本評論社、2004年。
丸山雅祥、成生達彦『現代のミクロ経済学:情報とゲームの応用ミクロ』創文社、1997年。