南山大学

 

Ⅰ.授業の概要

①講義科目名(単位数)

税法(2単位)

②担当者名

占部 裕典

③科目の種類

展開・先端科目

④必須の有無

選択

⑤配当学年・学期

2・3年(既修者コース:1・2年)・集中

⑥授業の概要

講義の内容は所得税法の解釈ですが、租税法の基礎理論、租税実体法、租税手続法、租税争訟法に及びます。授業は講義形式ですが、できるだけ多くの受講生と討議をするように努めます。以下のような点に配慮しながら行います。

(1)租税法の解釈の特殊性(税法と憲法・私法等の交錯を含む)

(2)所得税等の主要税目の課税要件にかかる争点

(3)税務紛争に応じた税務争訟方法の選択

(4)具体的な税務争訟での主張・立証のあり方

 本科目(講義)は、紛争処理能力やタックス・プランニングの能力の養成を第1にしています。また、課税要件事実は私法上の法律関係を前提にしていますので、私法の広範囲な知識も要求されます。

 なお、重点項目に相当する部分についてのテキスト等の講読、事例の検討が事前に受講生に要求されることは当然です。予習範囲は毎回のレジュメに指示しています。

⑦到達目標

本科目の受講生については、下記のような内容についての能力や知識を習得させることを目的としています。

(1)租税法の解釈の特殊性(税法と憲法・私法等の交錯を含む)に対応した法解釈能力

(2)所得税法を中心とした主要税目の課税要件の修得

(3)税務紛争に応じた税務争訟方法の選択と審理の進め方

⑧成績評価の基準と方法

平常点(授業での質疑応答)20%

定期試験 80%

試験問題は,2題の事例(横断的な事例)による。必要に応じて口頭試験を実施する。

欠席が5回以上の場合には定期試験を受けることができない。

⑨教科書

「租税法教材」(レジュメ)をコピーして配布予定。

⑩参考文献・参考資料

金子 宏『租税法』(弘文堂・最新版),

水野 忠恒 ほか『租税判例百選』第4版(有斐閣、2005),

三木義一・関根稔・山名隆男・占部裕典『実務家のための税務相談(民法編)』(有斐閣、2006年)

⑪履修条件その他の事項

 

 

Ⅱ.授業計画

担当

①テーマ

授業内の学修活動

授業時間外の学修活動等

②ねらい・内容

③授業方法・工夫

租税法(国税)の体系と私法との関係

 租税法は無数の法律と命令(施行令・施行規則)からなりたっているので,租税法の体系を説明する(講義)。そのうえで租税法の解釈原理(文理解釈)を私法(民法・商法等)と租税法との関連性に着目しながら検討する(討議)。特に後者については「譲渡担保と課税」「不動産の取得と課税」「時効と課税」にかかるケースを素材に討議する。さらに,地方税法の体系と地方税条例との関係も簡単に説明する(講義)。

 

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

租税法律主義と租税平等主義の具体的な適用場面

 憲法上の課税原則である租税法律主義が租税法規の立法及び解釈にあたり,具体的にどのように適用されるかをみていく(講義)。課税要件法定主義・課税要件明確主義・合法性の原則,手続保障の原則にかかわる個別事例(ケース)を取り上げる(討議)。租税法規不遡及の原則と例外,租税法律主義の一場面である合法性の原則の例外(租税法における信義誠実の原則),通達課税による問題などもここで取り扱う。その後,租税平等主義の適用場面を論ずる。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

租税回避行為と課税

 租税回避行為がいかなる場合に否認されるかを論ずる(講義)。判例が分かれている領域であるので,学説・判例の動向を詳細に検討する(講義)。特に最近の最高裁判例の検討を行い,さらに課税庁の否認のための手法である「私法上の法律構成による否認」についても検討を加える(討議)。同族会社の行為計算否認規定の適用上の問題はここで取りあげる。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

 

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

 

所得税法のアウトライン(所得税の成立から納付まで)

 所得税法の構成を概観する。そのうえで所得税法の具体的適用,所得税(租税債務)の確定手続(国税通則法を含む),納付(滞納手続にも言及。国税徴収法を含む),税務紛争処理手続といった,一連の流れを説明する(講義)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

企業形態の選択と所得の帰属

 所得税の課税要件を説明するが,ここでは特に納税義務者と所得の帰属を取りあげる。さまざまな私法上の企業形態(団体)と納税義務者との関係を論ずる。人格なき社団や信託(特定信託等を含む)の課税,さらに課税単位の問題もここで取りあげる(講義)。そのうえで,課税物件たる所得がだれ(納税義務者)に帰属するか(帰属のルール)を検討する(討議)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

所得税制度の基本的仕組みと課税理論

 所得税法における租税実体規定の内容及びその背景にある租税理論を理解したうえで,具体的な事例に基づいて所得税額を算出させる。租税特別措置法に基づく分離課税,特に不動産・株式の申告分離課税及び利子・配当(一部)の一律源泉分離課税の制度的な問題点をもあわせて検討する(講義)。ここで取りあげる事例は損益通算,所得控除関係である(討論)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

所得税制度の基本的仕組みと課税理論

 第6回の続き。所得税法の条文と照らしながら,具体的な計算を行う(講義)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

勤労性所得に対する課税

 給与所得と退職所得を中心に,法的問題を論ずる(講義)。特にフリンジベネフィット課税の問題(ストックオプション課税を含む),退職所得課税の問題(10年退職金事件,中途退職金支払事件,退職年金との関係等)をケースを通じてみていく(討議)。なお,源泉徴収手続の抱える法的な問題は給与所得との関係でのみ論ずる(討議)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

資産性所得に対する課税

 譲渡所得課税の趣旨,キャピタル・ゲイン課税(財産分与に係る課税関係),譲渡所得の金額の計算に際しての取得費等の範囲などを論ずる(講義)。みなし譲渡所得についての理解を深める(講義)。「取得費」「譲渡に要した費用」にかかる最高裁判例を素材に議論をする(討議)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

10

金融資産に対する課税

 利子所得,配当所得(みなし配当を含む)に対する法的問題を論ずる(講義)。投資信託課税,株式譲渡課税もここで取り上げる。なお,一時所得はここで言及する予定である。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

11

事業所得に対する課税

 事業所得に対する課税を取り上げる。ここで取り上げる問題の中心は,収益の計上時期と必要経費の範囲である。所得税法における収入の計上時期(所得の年度帰属の問題)に検討を加える(講義)。権利確定主義及び管理支配基準,特別の規定による収益の計上基準(現金主義等)を論ずる(討議)。そのうえで,必要経費の範囲,家事費,家事関連費,損害賠償金,親族に対する給与等の支払(所得税法56条を含む)等を順次取扱い,検討していく(講義)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

12

事業所得に対する課税(必要経費を中心に)

11回の続き。必要経費のうち、売上原価(棚卸資産の評価)、減価償却費、繰延資産、準備金・引当金等を概説する。有姿除却、少額減価償却資産、資本的支出・修繕費に係る判例を取り上げる。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

13

不動産所得に対する課税

 不動産所得の問題の多くは事業所得と重複する面が多いが,不動産所得固有の問題を,山林所得も含めて検討する(講義)。なお,13回でとりあげなかった棚卸資産の評価,減価償却費の問題はここで取り上げる。なお,雑所得はここで言及する。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

14

資産損失,損益通算,所得控除

 さまざまな資産にかかる損失の課税上の取扱いを検討する(講義)。最高裁判例等をもとに,事業用資産,業務用資産,生活に必要な資産等にかかる資産損失について議論をする(討議)。所得控除(人的控除)については,順番にその内容と控除の趣旨を説明する。医療費控除を中心にその控除対象について判例をもとに検討をする(討議)。また,具体的な裁判例(裁判資料)を用いて,総合事例の検討を行う(討議)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読

15

まとめ

総合事例を通して,所得税法の重要問題の総復習を行う(まとめ)。

関係判例を集約した1つの事例を作成し、討議

事前に指示をする事例の争点についてのとりまとめ、関係判例の熟読