学科・教科ごとの目標 人文学部心理人間学科 高一種公民
● 人文学部心理人間学科(高一種免(公民))
心理人間学科は、現在そしてこれからの社会で求められる、人を理解し、人と関わり、人を支援する態度と専門的な知識・技能を備えた人間を育成することを目標としている。そしてこの教育目標を達成するために不可欠な、心理学、教育学、人間関係論を中心としたカリキュラムを編成し、理論学習のみならず体験学習の側面にも注力して教育を行っている。
心理人間学科は2000年4月に南山大学文学部教育学科並びに南山短期大学人間関係科を母体として誕生した。文学部教育学科は、教育学、心理学、社会学などの教育・研究を通して人間の発達と教育について学習することを中心としたカリキュラム構成であった。そして、以前より中学校社会とともに高校地理歴史並びに公民の課程が認められており、この地域の教員養成に一定の役割を果たしてきた。そして現在の心理人間学科にも、教育学科の中核的カリキュラムの多くが受け継がれている。
一方、南山短期大学人間関係科は、その開設時以来、人間関係にかかわる体験学習を実践し、探究してきた。現在の心理人間学科のカリキュラムは、人間の発達と教育について探究する文学部教育学科のカリキュラムと、南山短期大学人間関係科が探究してきた人間関係プロセスにかかわる体験学習のカリキュラムが融合したものであり、人間や社会、教育などについて総合的、多面的に学べるカリキュラムとなっている。
具体的には、「教育思想」や「教育行政論」「現代教育論」「教育社会史」「教育社会学」「子ども・青年社会学」といった教育学、社会学関係の科目、「教育心理学」「発達心理学」「学習心理学」といった心理学関係の科目が開設されており、人間の発達と教育に関する基本的な知識を涵養している。
さらに、具体性をもって人を理解し、人と関わり、人を支援する態度と専門的な知識・技能を育成する科目として体験学習の科目が充実している。そのひとつの例として、「人間関係フィールドワーク」をあげることができよう。この科目では、特別支援学校や不登校生徒の指導教室、障害児・者施設や高齢者施設などに1年間通い続けるものである。教職課程を履修している学生が「人間関係フィールドワーク」を受講した場合、法令外の幾つかの施設を除いて教員免許状取得の要件である「介護等体験」実習に読み替えることができる。この読み替えは、愛知県教育委員会の了解のもとに行われている。また、小グループの中で生じる人間関係のダイナミックスについて、ラボラトリー方式の体験学習によって、理論の理解とグループプロセスに働きかける実際的な技能の育成を目指す「人間関係プロセス論(ファシリテーション・アプローチ)」という科目も開設されている。
このような体験学習は、人に関わることを単に知識として身に付けるのではなく、具体性を伴ったより深い理解を促し、またそこに自分がどのように関わることができるのか、かかわるべきなのかといった、対個人、対集団の能動性を涵養することにもつながっている。
このようなカリキュラムの特徴をもつ本学科の卒業生が、身に付けた知識や技能を社会において発揮できる場は多岐にわたると考えられる。しかし、その中でも特に次世代を担う社会人の育成のために力を発揮する意義は大きいといえよう。そして以上のような本学科の掲げる教育目標およびカリキュラムの特性は、高等学校、公民において目標とする、民主的、平和的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養うことと一致する。また教員として不可欠な、生徒との関係、保護者との関係、同僚教員との関係、地域の市民との関係をより望ましいものにする対人関係能力を育成するものでもある。
もちろん、教員には教科の専門知識も不可欠である。免許法規程の科目「社会学、経済学」「哲学、倫理学、宗教学、心理学」には、本学科の専門科目が多く含まれている。たとえば「地域開発と人間関係」では、我が国のみならず、アジア諸国で生じている平和、人権、貧困、環境などの諸問題を扱っている。また「教育思想」では、何人かの哲学者の著作を出発点として、教育実践を支える思想の歴史と課題について検討する。「ホリスティック・アプローチ(死生論)」では、人間観や生命観、医療のあり方などをホリスティックな観点から探究している。さらに「生涯発達心理学」では、青年期およびそれ以降の人間の発達について仕事や家庭といったキャリアの視点を意識しながら解説している。
また「心理人間学演習」をはじめとして、多くの授業で現代社会の諸問題について主体的に思考し、理解することが求められる。このような学習経験は、そのような思考力を涵養するとともに、そのような思考を教授、支援する力をも育成することにつながっていると考える。
このように、教科の専門知識を得るためにも学科開設の科目が寄与している。しかし免許法規程の科目「法律学」については、対応する学科科目がないことも事実である。この点に関しては教職専門科目や他学部の科目、他学科の科目を通してそれらを身に付けることも不可欠であるため、それを積極的に支援している。
以上のようなことから、本学科では公民の教員として不可欠な資質を養成できると考えている。