2003年度 パッヘ研究奨励金T−A−1(特定研究助成・特別) 研究成果報告書

   
氏名 長谷川 雅雄 所属 人文学部心理人間学科
研究課題 自己認識としての「虫」観・「虫」像に関する学際的研究
研究の種類 グループ
共同研究者 ペトロ・クネヒト

研究実績の概要
 この研究には研究協力者として「虫の会」と称する研究会をともに組織している日本文化学科の美濃部重克および辻本裕成の二氏を迎えている。また鎌倉時代後期に惟宗具俊が著した『医談抄』を対象にした『医談抄』研究会をも同時平行して行なっている。その会には上記二名のほかに愛知県立大学助教授の中根千絵、立教大学博士後期課程の小野裕子の二氏を研究協力者として迎えている。「虫の会」と『医談抄』研究会はそれぞれ月例会を開いて研究会活動を行なっている。研究はその月例会および資料収集・調査のための研究旅行を遂行することを通して成果をあげつつある。
〔経過〕研究助成金は(1)研究旅行の旅費、(2)書籍、(3)資料調査、資料作成と資料整理への協力に対する謝金、(4)資料のコピ−代金、以上の四種類の用途にもちいた。
(1) 旅行は、東北地方2回(そのうち1回は「虫の会」の研究協力者2人を加えた4名。他の1回は共同研究者1名のみ);岩手県、宮城県における「虫」と「鬼」に関わる民俗行事ならびにそれにかかわる宗教的・呪術的観念を解明する文献および民族資料の収集を行い現地の研究者との意見交換を行なった。東京3回(そのうち1回は研究代表者1名、あとの2回は研究代表者が研究協力者1名を同伴して2名);国会図書館ほか東京の文庫・図書館を訪問、「虫」「鬼」観念にかかわる資料を集成した。大阪1回(研究協力者2名のみ);武田製薬の杏雨書屋に古典医学・医学史にかかわるオリジナル資料典籍の調査に赴き資料を収集した。
(2) 中国ならびに日本の古典医学・医学史にかかわる書籍を購入した。
(3) 『医談抄』研究会の月例会に来名し研究調査に協力している小野裕子の旅費、「虫」関係資料の資料整理そのほかに対する協力者への謝礼として使用した。
(4) 資料のコピ−代金として使用した。
〔成果〕以上のような仕方による研究会運営と助成金の使用によって以下のような成果を上げた。「心の鬼」をテ−マにした論文を作成し、現在、校正中である。「虫」観念と対比して心に像を結ぶ「鬼」観念がどのようなものであるかを、おもに古典医学、医学史、古典文学に関わる典籍とオリジナル資料をもちいて論じたものである。「腹の「虫」」論は現在、資料の収集を遂行中で、今後、さらに資料収集につとめ、次年度中に論文として発表する予定である。『医談抄』研究は次年度に書物として出版する予定で、現在、その半分にあたる内容の素稿を作成した。当該書は「虫」観「虫」像にかかわる面白い知見を含むだけでなく医学史、国文学、民俗学の分野において研究対象となりえる書物である。それで学術書として使用するにたえる翻刻本文の作成と典拠の解明を中心にした研究を遂行中である。なお『医談抄』研究は科研費も得ている。
(研究協力者の旅行に要した費用は、共同研究者が旅行する場合の旅費に準じて算定し、収支報告においては「謝金」として処理されている。

研究成果公刊(計画を含む)
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 「鬼」と「虫」−「心の鬼」論に向けて− @ 書名  
雑誌名 『アカデミア』人文・社会科学編 出版社  
巻号 第78号 巻号  
発表年月   発表年月  
ページ pp.245〜286 ページ  
著者名 長谷川 雅雄・ペトロ クネヒト・美濃部 重克・辻本 裕成 著者名  
備考   備考