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本研究は、守秘義務と説明責任に関する倫理的問題を明らかにするために、功利主義や義務論といった規範倫理学理論を援用し分析を行ったものである。本年度は特に生命倫理の文脈での守秘義務問題に注目し、規範倫理学的観点から分析・検討した。 |
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2005年7月2日に東京大学医学部教育研究棟にて開催された日本公益(功利)主義学会第8回大会にて、「現代功利主義と生命倫理:守秘義務と医療情報」と題する研究発表を行った。質疑応答を通じて、守秘義務問題の重要な争点に関する理解を深めることができた。 |
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上記研究発表に基づき、図書の部(1)の論文を執筆した。この論文では、「専門家」の負うべき特殊な義務としての守秘義務が確認された上で、守秘義務の帰結主義的正当化根拠の妥当性が問われ、併せて、守秘義務の解除可能性問題が功利主義の理論的枠組みの中で十分信頼に足る仕方で論じられることが示される。そして、むしろ洗練された功利主義理論によってこそ守秘義務の切実な問題は正当に取り扱われうる、と結論される。 |
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国内外における守秘義務と説明責任に関する研究文献、および、規範倫理学に関連する研究文献を収集した。本年度は、とりわけ、守秘義務の議論に蓄積のある生命倫理の領域に絞って文献収集を行った。 |
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研究ノートの整理とそれらに基づく関連研究の専門ウェブサイトの開設については、目下作業中であり、一年以内に始動させたいと考えている。 |
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本年度の研究の結果、守秘義務に関して一定の倫理学的知見を得るに至った。今後の課題は、本年度はそれほど踏み込んで検討できなかった説明責任の問題に取り組むこと、および、当該テーマの内部告発研究との接続である。 |