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本研究課題のうち、現代日本の青年文化について研究を進めた。子ども文化についての研究は十分にできなかった。 |
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前年度のパッヘ研究奨励金による研究でも十分に達成されなかった文化社会学の理論的検討は今年度も十分ではなく、引き続き研究を継続させていきたい。 |
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本年度の研究で明らかになったのは、現代日本の青年文化のうち、次の二つのトピックが重要だということである。@「おたく」文化、A「メンヘル(=メンタルヘルス)」文化。 |
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上記@に関しては、アニメやテレビゲーム・パソコンゲームに代表される旧来型の「おたく」文化が、現在はそうした領域に限定されず、各領域に共通する文化的スタイルとして確立されているという点で重要である。「おたく」的スタイルが、文化のあり方のモデルとなっているのではないか、という仮説を得た。これは同時に、領域で細分化された各文化が世代を越えて共有されていることも意味する。 |
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上記Aは、他者や自身の死・精神疾患に対しての関心であり、グロテスクで反社会的な価値を有するものへの関心を示す文化である。上記のおたく文化との関連ももちつつ、引きこもりや少年犯罪とも関連性をもつ文化であることが明らかになった。 |
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これに関連して、現代人全般に関わる精神疾患の代表ともいえるうつ病について、社会学的な立場からどのように理解できるかについても研究を行った。 |
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課題として次の三点が残った。@現代青年文化の二つの焦点が、どのように社会構造的なものと関連しているか、さらなる理論的検討、A二つの焦点同士の関係の理論的精緻化、B青年文化の具体的な事例をより取り入れた実証研究。 |
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また、今回研究し残した子ども文化についても、より具体的な事例とデータをもとに、研究を重ねていかねばならない。それは前述した文化社会学理論についても同様である。 |