2005年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・特別)研究成果報告書

  
氏名 美濃部 重克 所属 人文学部日本文化学科
研究課題 『平家物語』研究・『伝承文学注釈叢書』企画遂行・『月庵酔醒記』研究

研究実績の概要
 当初、研究計画は3本の柱を立てて本年度の研究に望んだ。(1)『平家物語』研究、(2)研究的注釈書『月庵酔醒記』の完成、(3)研究的注釈叢書『伝承文学注釈集成』の企画の立ち上げ、の三点がそれである。
(1)は『伝承文学研究』第55号に掲載予定の論文執筆が中心の課題で、「<隠喩的文学>としての『平家物語』−巻ニ「座主流」を中心に」を脱稿して、現在、初校がでている。本年度夏中の刊行を予定していたが、著しく遅れて、いま初校の段階である。また別に東寺蔵の重要文化財「火羅図」の内容解読とその用途および背景を『平家物語』巻ニ「一行阿闍梨」に関連付けた400字詰め原稿用紙90枚ほどの論文を脱稿した。書物体裁の研究誌『唱導文学研究 第5集』に掲載を予定していたが、長文すぎることと内容が同書とはすこしずれるものであるため、編集者にお願いして掲載の予定を辞退して、現在、同書のためには伝尸病に関する別の原稿を共同執筆中である。すでに作成した論文は、まだ掲載雑誌ないし書物を探さないままに手元にとどめている。
(2)の『月庵酔醒記』の研究は、名古屋市立大学教授の服部幸造、岐阜大学教授の弓削繁と小生の三名の編集で、総勢11名の執筆者の参加によって月例会を設け原稿を作成中である。上中下の三巻に分け、当初は本年度中の上巻刊行を予定していたが、提出された原稿を何度も書きなおしてもらう作業を続けていることと、原稿未提出者がいるために、刊行が著しく遅れている。『月庵酔醒記』は戦国時代の関東の大名、一色直友が著した啓蒙的な一種の人文百科事典で、全体像を詳細な注釈を通して詳細に説き明かすのは、われわれの書物が最初である。それゆえ執筆者は高度な基礎研究を目指すべく予定を大幅に遅れたかたちで原稿作りに取り組んでいる。
(3)の『伝承文学注釈集成』の出版企画は当初全20巻を予定していたが、小生も執筆者のひとりとなる予定であった延慶本『平家物語』をこの叢書から除外する、あらたに泉鏡花集を加えるなどの変更を加え最終的に第一期15冊とすることとした。収載書目および執筆者はほぼ確定している。立命館大学名誉教授の福田晃、学習院女子大学教授の徳田和夫および小生の三名が監修にあたる。伝承文学研究会という研究会の研究活動のいったんの仕上げと位置付けた企画である。小生が執筆者に加わる『日本書紀私抄』はすでに執筆に向けて共同執筆者の二人と京都で毎月、集まりを持っている。泉鏡花集は小生も執筆にあたり執筆に向けて二人の共同執筆者との月例会を本学で本年4月から行なうことを決めた。
 研究成果の刊行にかんして、申請外でふたつの研究成果を刊行した。本学の辻本裕成、愛知県立大学助教授中根千絵、立教大学博士後期過程院生小野裕子および美濃部重克『医談抄』(伝承文学資料集成22、三弥井書店、平成18年2月刊、368頁)、美濃部重克「幻の国飛騨「夜長姫と耳男」」(『日本語・日本文学・日本文化 国文学 解釈と教材の研究』特集「歴史家坂口安吾−世界システムとアジア」、2005年12月号、学燈社、平成17年12月、26−33頁)。以上の二点執筆のための準備は(1)(2)(3)の執筆に向けた活動に付随して資料収集を行なった。

「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 「<陰喩的文学>としての『平家物語』−巻ニ「座主流」を中心に−」 @ 書名 『月庵酔醒記上』
雑誌名 『伝承文学研究』 出版社 三弥井書店
巻号 55号 巻号  
発表年月 2006年夏予定 発表年月 2006年冬予定
ページ pp.1〜13 ページ 350頁ほどの予定
著者名 美濃部 重克 著者名 服部 幸造・弓削 繁・美濃部 重克編集
備考 提出(初校) 備考 未提出
A 論文題目   A 書名 『日本書紀私抄』(伝承文学注釈業書)
雑誌名   出版社 三弥井書店
巻号   巻号  
発表年月   発表年月 2007年度中を予定
ページ   ページ 350頁ほどの予定
著者名   著者名 美濃部 重克・中尾 瑞樹・佐々木 雷太
備考   備考 未提出
B 論文題目   B 書名 『唱導文学研究』収録、論文名は「「鬼」と「虫」−「伝尸病肝心鈔」の背景−」
雑誌名   出版社 三弥井書店
巻号   巻号 第五集
発表年月   発表年月 2006年秋の予定
ページ   ページ 390頁ほどの予定
著者名   著者名 美濃部 重克・辻本 裕成・長谷川 雅雄・ペトロ・クネヒト
備考   備考 未提出