2005年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・特別)研究成果報告書

  
氏名 辻本 裕成 所属 人文学部日本文化学科
研究課題 物語・日記文学の成立と享受に関する研究

研究実績の概要
 本研究の当初の予定は、婉曲表現と敬意の問題を中心とする物語文学の成立に関わる問題と、特に室町時代を中心とする源氏物語享受に関する問題の二本立てであった。前者については資料の収集・整理などに留まり、充分な研究成果を挙げることができなかったが、後者については、一定の成果を挙げることが出来た。
神宮文庫に赴き、『山頂湖面抄』の最善本とされる写本を調査した。同写本は永禄の奥書を持つ写本で、実物を調査することによって、奥書通り永禄の写と考えてよいことが確認できた。「押八双」と呼ばれる、由緒正しい古写本に見られる装丁を実見できたのも収穫であった。
今井源衛・古野優子氏による『山頂湖面抄』諸本についての所説を再検証した。
そのために、国文学研究資料館で、『山頂湖面抄』の諸本のマイクロフィルムを閲覧し、諸本について考えた。
今井・古野氏による翻刻を参考に、諸本の本文がどのようにちがうのかを整理した。
その結果、両氏が第一類として分類する5つの写本は、更に3種に分けられることが判明した。
『山頂湖面抄』の作者とされる祐倫による『光源氏一部歌』と『山頂湖面抄』の諸本の本文とを詳細に比較した。
その結果、諸本の本文の違いは、祐倫が複数回(少なくとも3回)にわたって、『山頂湖面抄』の書写・伝授を行っていることが判明した。このことにより、室町期の源氏物語講釈を生業としていたらしい老尼が、相手によって注釈の内容や伝授する秘事を変えつつ、その業を行っていたことが具体的に見えるようになった。
以上の成果を論文として発表する予定である。(現在印刷中)

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@ 論文題目 「『山頂湖面抄』成立試論−異文は何故生じたか−」 @ 書名  
雑誌名 『南山大学日本文化学科論集』 出版社  
巻号 第6号 巻号  
発表年月 2006年3月 発表年月  
ページ pp.13-30 ページ  
著者名 辻本 裕成 著者名  
備考 公刊次第提出予定 備考  
A 論文題目   A 書名  
雑誌名   出版社  
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発表年月   発表年月  
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著者名   著者名  
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B 論文題目   B 書名  
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