経済成長に関する従来の研究のほとんどは、新古典派成長理論に立脚し、供給サイドから経済成長を説明しようとするものであった。その場合、一国の経済成長の高低を決めるのは、資本・労働の増加スピードや技術進歩の早さといった供給要因にほかならない。 |
本研究は、これまでの主流派経済成長理論とは異なり、需要サイドが経済成長率を決定するという立場をとり、総需要の中でもとりわけ消費の拡大スピードが経済成長率を決定するという仮説を採用した。 |
消費のイノベーション(新消費財の出現)が消費の拡大をもたらす原動力とみなし、それが生産の増加と生産要素投入の増加をもたらすと考えるのである。持続的に生起する消費のイノベーションが経済成長の源泉である、というのが本研究の仮説であり、この仮説をデータに基づいて検証することが本研究の目的である。 |
1) |
まず、1963年から2002年までの家計調査データを基本データとし、43項目の実質支出の年次データを用い、5年間に支出が1.5倍以上増えた項目を「新消費」と定義し、新消費の合計が支出合計に占める割合である「新消費割合」と実質GDP成長率との間の関係を検討した。 |
2) |
その結果、新消費割合は、1963年から2002年までのデータ期間では、高度成長期の後半部分にあたる1963年から1970年にかけて特に高いことが判明した。 |
3) |
また、高度成長期が過ぎてからも、新消費割合が高くなる次期にGDP成長率も高くなる傾向があることがわかった。 |
4) |
新消費割合とGDP成長率についてグレンジャーの因果関係をテストした結果、新消費割合からGDP成長率への一方的な因果関係が認められた。すなわち、GDP成長率から新消費割合への影響は認められず、逆の新消費割合からGDP成長率への一方的な影響が有意に検出された。 |