MNEの移転価格操作メカニズムに関する理論的先行研究の多くは、MNEの移転価格操作による親子会社間の名目的な所得操作メカニズムを理論的に解明することが中心で、移転価格操作の生産や雇用に対する実質的効果が解明されていない。 |
本研究では、パッヘ研究奨励金T-A-2により購入した諸文献を利用し、同じく新たに購入したノート・パソコンとソフトを使用して論文作成に取り組んだ。 |
山田(2002)および(2004)の研究を発展させて、MNEの移転価格操作が生産や雇用という経済の実物面に与える効果を理論モデルで分析し、新たに次のような分析結果を得ることができた。 |
「各国の租税率改定がMNEの最適移転価格操作を通じて、MNE親子会社間に国際的所得移転という名目的な効果を発生させるのみならず、親子会社の生産と雇用という実質的な効果をも生み出し、とりわけ、MNE本国における税率引き上げが、MNEの移転価格操作を通じて親会社と子会社双方の生産と雇用を増加させる。」 |
以上の理論命題は、先行研究には発表されておらず、本研究の成果は、「移転価格操作の雇用効果」として『南山経済研究』第21巻第1号(2006年6月発刊)に投稿する予定である。 |