機能通貨アプローチと多通貨会計の関係について研究してきた。この問題に関する研究は、これまでされていないのが現状で、国際会計基準としても機能通貨アプローチで統一化が進んでいる。私は、機能通貨アプローチで採用されている会計処理について、グローバル化が進む環境下において、実態の開示が適正に行なわれるのかという問題意識のもとで研究を進めている。その結果として、以下の点について検討し、その結果を南山経営研究に論文を投稿している。その中で、以下の内容を示した。 |
部分決算日レート法の特徴と多通貨会計の共通点に着目し、本国通貨単位の財務諸表への為替レート変動の影響について設例を通して検討した。 |
その結果として第1に、単一測定尺度による会計と複数測定尺度による会計の違いは、非貨幣性項目に係る為替レート変動の影響に関する認識の違いにある点を指摘した。部分決算日レート法及び多通貨会計は、非貨幣性項目の評価原則に係らず為替レート変動の影響を認識する点に特徴づけることができる。 |
第2に、単一通貨会計では、為替レート変動の影響が発生しないケースについても認識してしまうことを指摘した。その点、多通貨会計では、為替リスクの発生を認識できる。 |
第3に、単一通貨会計では、為替レート変動の影響を認識する項目を選択しなければならず、経営者の意図あるいは政策的な意図が介入する危険がある点を指摘している。 |
以上の点を指摘し、現行の会計制度では、いずれかの方法の選択肢しかないことから為替レート変動に係る影響を財務諸表上に開示するためには、多通貨会計により状況にあわせた会計処理する事を検討しなければならないことを示した。 |
これまで多通貨会計は単なる記録の処理に係るものとして捉えられてきたが、理論的な考察を行なっている。 |
また、換算差額の処理として、貨幣性項目に係る為替レート変動の影響を当期の損益計算に算入する点については、貨幣性項目に係る実現・未実現の問題を解決しなければならない点を指摘している。稼得利益とは区別してその他の包括利益として区分表示し、為替レート変動の影響に係る情報として、未だ確定しない部分と確定した部分を明確に区別すべきであることを主張している。 |
以上のことから単一測定尺度による会計か複数測定尺度による会計かという二者択一では実態開示が適性に反映できない。それぞれの取引内容に対応する記録がなされるような多通貨会計が必要になるものと考えられる。 |
外貨建取引における外貨の測定尺度性が近年わが国において制度化されたばかりであり、ここで考察してきた内容も含めてさらなる研究が必要であると考える。 |