本研究は、ラボラトリー・メソッドによる体験学習法(以下、体験学習と略記)を用いた人間関係トレーニングの学習効果を明らかにすることを目的とした。過去の実践および研究から、体験学習による人間関係トレーニングの学習効果は非常に多岐に渡ることが示唆されてきた。本研究ではその中から、体験学習が社会的スキルに及ぼす影響に注目し、検討を行った。 |
【研究経過】 |
1. |
短期大学生を対象に、体験学習による人間関係トレーニング実施。 |
2. |
人間関係トレーニングの前後に、Kiss-18(菊池、1988)を用い、トレーニング参加者の社会的スキル得点を測定。 |
3. |
データ分析により、社会的スキル得点の上昇者と低下者がほぼ同数であるとの結果を得る。 |
4. |
人間関係トレーニングによる社会的スキル得点の低下要因を検討するため、面談による要因分析実施。 |
【研究結果】 |
1. |
人間関係トレーニングの結果、参加者の約半数に社会的スキル得点の上昇が、残りの約半数に得点の低下が認められた。 |
2. |
社会的スキル得点低下者に対して面談を行い、得点の低下要因を分析した結果、トレーニングによって 1)自己肯定感の向上 2)“おつきあい”的な関係性からの脱却 などの変化が参加者に生まれたことにより、社会的スキル得点が低下したと考えられた。 |
3. |
これらのことから、社会的スキル得点の低下は、トレーニングによる社会的スキルそのものの低下を示したものではなく、自己や対人関係に対する認知の変化によって生じた可能性が示唆された。 |