本研究課題の目的は、(ア)公示方法のある担保物権である抵当権に基づく物上代位権行使と第三債務者の相殺権、及び(イ)公示方法のない担保物権である動産売買先取特権に基づく物上代位権行使と第三債務者の相殺権が競合した場合の問題(優劣問題)に関する法解釈論を確立することである。そのため、以下の順序で研究を遂行した。 |
1.2005年4月〜5月 |
(1) 賃料債権に対する抵当権の物上代位権行使と賃借人(第三債務者)の保証金返還請求権を自働債権とする相殺との優劣について判示した@最高裁平成13年3月13日判決(民集55巻2号363頁)について検証した。 |
(2) 賃料債権に対する抵当権の物上代位権行使と賃借人(第三債務者)の敷金返還請求権との相殺について判示したA最高裁平成14年3月28日判決(民集56巻3号689頁)を検証した。当初の予定では、@判決とA判決に通ずる統一的な解釈理論を展開した論稿を執筆し公表する予定であったが、なお検討の余地があると考え、公表を見送った。 |
2.2005年6月〜9月 |
(1) 動産売買先取特権に基づく物上代位権行使と動産の転買主(第三債務者)の相殺との優劣問題について、2004年12月〜2005年2月にかけて若干の考察を行い、2005年6月、「動産売買先取特権の物上代位と相殺との優劣」と題する論文として公表した。本論文は、『最新 倒産法・会社法をめぐる実務上の諸問題』(民事法研究会)122頁〜149頁に掲載された。 |
(2) 上記の考察により、本研究課題と密接に関連する問題である、動産売買先取特権に基づく物上代位権行使と物上代位の目的債権譲渡との優劣問題を検討する必要があると考え、この優劣問題の事案について判示したB最高裁平成17年2月22日判決(金融・商事判例1215号24頁)を検証し、その成果を論文として執筆した。本論文は、南山法学29巻2号1頁〜55頁(2006年1月公刊)に掲載された。 |
3.2005年10月〜 |
前掲2の時期の研究結果を踏まえ、1の時期において残された研究課題である「抵当権の物上代位と相殺との競合問題」について、再度検討中である。 |