研究経過 |
@ 初期(平成17年5〜8月)においては、日本で争われている事例、判例を調査分析し、資料を収集した。具体的な判例としては、大阪地判平成12年5月25日判時1754号102頁、大阪地判平成16年3月9日判時1858号79頁の関連文献を収集した。また最新事例として、秘密性を放棄した形での接見交通権に関連する最判2005[平成17]年4月19日判時1896号92頁の関連資料を収集するとともに、刑事弁護倫理研究会(大阪にて、7月)に参加し、同事例の情報を収集した。 |
A アメリカに渡米した後(平成17年9月〜平成18年3月)においては、接見交通権の趣旨と弁護人依頼権の保障との関連性があるのか否かの研究に当てられた。また、接見交通権の秘密性を研究するに当たり、被疑者・被告人の権利という視点から、アメリカで広く証拠法の領域において議論されている依頼者・弁護士のコミュニケーション特権を調査し、関連文献を収集した。また、アメリカの未決拘禁制度において、実際上の接見の秘密性はどのように保障されているのか、いないのかをカリフォルニア州について文献調査した。また、秘密交通権に関連するアメリカの代表的な判例事例を検討した。特に、主なものとして、Weatherford v. Bursey, 429 U.S. 545(1977)、State v. Quattlebaum, 527 S.E. 2d 105(S.C. 2000)などを検討した。また、ワシントンDCのナショナル・アーカイブにて、秘密交通権について、日本の刑事訴訟法の制定過程についても調査した(平成17年12月)。 |
B さらに後半(平成18年1月)には、一般に考えられている弁護士倫理規則を調査するために、カリフォルニア大学バークレー校の研究者(スクランスキー教授、マーフィー講師)にインタビューを行った。 |
研究成果 |
@ これまで余り検討されてこなかった、接見交通権の秘密性の性格について、弁護士倫理、証拠法との関連性から、それぞれその法律論が議論されていることがわかった。 |
A また、アメリカでは、秘密交通権は有効な弁護を受ける権利(修正6条)と関わりがあること、一方、弁護士倫理の問題もあるが、少なくとも、刑事事件の接見交通権の秘密性との関連では、日本で問題とされている事態(弁護士が被告人の情報を共同被告人に通知するといったおそれから信書の開披などの規制をすること)が議論されていないことなどが明らかとなった。 |
B 日本の刑事訴訟法の制定過程では、秘密交通権の確立は重要な憲法上の要請であることも分かった。 |
今後は、以上の研究成果をより精緻なものとして、刑事訴訟法の沿革、アメリカ法、日米の判例を整理する。またアメリカでは「外界から遮断されない権利」として、未決被拘禁者の権利が保障されていることから、この点を調査することが必要である。これらの研究をさらに深めるとともに、「接見交通権の秘密性と依頼者・弁護士間のコミュニケーション特権」として論文を公刊することを検討中である。 |