2005年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・特別)研究成果報告書

  
氏名 大塚 達朗 所属 人文学部人類文化学科
研究課題 縄紋土器生産論と生業論に関する通説の見直しによる縄紋文化研究の理論考古学的展開

研究実績の概要
【研究経過】
@ 縄紋文化を支えたのが平等社会ではなく階層化社会であったという問題提起のために、縄紋文化研究の最も基本的領域である土器生産と生業に関する通説を見直すことにした。
A @のために、各地のそれぞれの集落で土器が生産され、そこで使われ、壊れればすぐさま廃棄され、また、生産されるという縄紋土器のライフサイクル観を、移入・模倣、精製・粗製、優品・並品、異所・同所などの項目から、再検討した。
B @のために、どこでも土器が作られたという在り方を各地の縄紋社会の豊かさによるとみなし、その豊かさを支えたのが大量に遡上してくるサケ・マスであったというサケ・マス論を再検討した。
【研究成果】
@ 異系統土器に注目した。異所的存在を前提にすると、異系統土器は移入品か模倣品で、優品か並品かの区別でいえば優品の筈で、しかし、優品であれば精製土器に分類される。ところが、精製土器と粗製土器の製作技法上のクセを比較して特定粗製土器と精製土器とが連絡を有したことを例証したことで、どこででも土器が作られたのではなく、特定の場所や特定の集団によって製作されたことが実態であることを明らかにし、縄紋土器の異所的存在を否定した。したがって、移入・模倣論が成立せず、特定集団によって遠隔地にもたらされた結果が遠隔地に出現した異系統土器であることを論じた。
A サケ・マスの魚骨は、特徴がはっきりしていて他の魚種に比べて同定が可能な骨が多いので、発見されているサケ・マスの魚骨の出土量は有意であると判断して、他魚種との出土比率を検討してみた結果、他魚種に比してサケ・マスの魚骨が飛び抜けて多く発見された遺跡がないことを確認した。また、サケ・マスは本来寒冷な地方によく遡上する魚種であるが、そうであるならば北海道の遺跡に最も多く出現しなければならないが、そのような事実も認められなかった。したがって、サケ・マス獲得が縄紋社会を支える基盤的な生業ではないと考えた。むしろ、縄紋社会を支える生業基盤は堅果類の貯蔵であることを貯蔵穴の広域分布から見通した。
B 土器製作が特定集団の仕事であることや、貯蔵穴には管理が必要であることを考えあわせるならば、各地の縄紋社会が階層化社会であったと見なさないと説明がつかないとの結論に到達した。

「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 「縄紋土器製作に関する理解〜その回顧と展望〜」 @ 書名 『生業の考古学』(仮題)
雑誌名 『考古学フォーラム』 出版社 同成社
巻号 18号 巻号  
発表年月 2005年11月 発表年月 2006年9月(予定)
ページ pp.2-12 ページ  
著者名 大塚 達朗 著者名 大塚 達朗 他12名
備考 別刷を教育・研究支援事務室に提出 備考  
A 論文題目   A 書名  
雑誌名   出版社  
巻号   巻号  
発表年月   発表年月  
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著者名   著者名  
備考   備考  
B 論文題目   B 書名  
雑誌名   出版社  
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著者名   著者名  
備考   備考