1、目的と意義 |
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2004年よりわれわれは、広域調査方法論確立のための地域データベース形成を目的として、考古学・地形区分・農学・碑文学・建築学等の知見を総合する方法論を採用しながら、先史・古代の遺跡の踏査を行なってきた。 |
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現在までに発見された遺跡は40遺跡余りとなり、いずれも先史時代に属するものであり、カンボジアだけでなく東南アジア全体でも調査例は多くはないものである。 |
2、トラペアン・トナールの測量調査 |
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Trapeang Thnal(トラペアン・トナール)遺跡は、カンボジア南部のコムポート州に所在する。この遺跡は、方形と円形とからなる三重の囲みをもつことが確認されたもので、採集された土器から、本遺跡の時期が先史時代のものであることが判明している。 |
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今回の調査の重要性をまとめると以下のようになる。 |
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東南アジアにおいてほとんど調査例のない先史時代の囲郭集落であること。 |
A |
カンボジア史の中で、ほとんど調査研究のなされていない時代・地域であること。 |
B |
遺跡が破壊の危機に瀕していること。 |
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今回の成果としては、測量図の作成に尽きるが、遺跡が極めて大規模なものであるため、今後、継続的な測量調査を実施する予定である。 |
3、クヘアルオン南洞穴の調査 |
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Kuhea Luang south cave(クヘアルオン南洞穴)は、トラペアン・トナールと同じく、カンボジア南部のコムポート州に所在する。この遺跡は2005年3月の踏査で発見したもので、新石器時代からアンコール時代までの長期にわたって継続使用されている。 |
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8月の調査では、遺物の散布状況の確認を行い、3月には洞穴の平面図を作成して将来の発掘調査に備えることにした。 |
4、カンボジアとの共同調査および教育 |
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現在、地域研究においても、考古学研究においても、その国の研究はその国の人によってなされるべきであり、もしそうでなくともその国の人に何か貢献するものがなければならない、というのは常識となっている。 |
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今回も王立芸術大学(RUFA)との共同調査を実施し、現在までに形成された共同作業・信頼関係を一層強固なものとしている。また、調査にはRUFAから2名の教官ばかりでなく3名の学生も継続的に参加してきており、共同調査ばかりでなく、共同教育という点においても成果を挙げつつある段階である。 |
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