1. |
史料収集活動 |
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(1) |
東京大学史料編纂所において、尾張国丹羽郡小折の国人生駒氏について、近世に成立した「生駒氏伝記」「生駒家系図」等の史料を閲覧。 |
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(2) |
金沢市立図書館「加越能文庫」所収文書から、尾張出身武士の戦国末期における家系・由緒等に関連する史料を収集。 |
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(3) |
名古屋市立鶴舞中央図書館・蓬左文庫等において、尾張・三河出身の武士についての近世家系伝承の事例を収集。 |
2. |
研究経過 |
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(1) |
今回の研究では、尾張部北西部出身の武士−生駒・横井・大橋・池田・加藤・岡田の諸氏−を主たる対象とした。 |
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(2) |
生駒・横井氏については、近世前期における知行地・身分(名誉)確保の視点からの「歴史」再構築行為が見られ、大橋・池田氏については、軍記物に強い影響を受けた形での「歴史」再構築行為が見られた。 |
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(3) |
横井・岡田氏については、過去の名族の子孫であるとする伝承が戦国末期までに成立した。 |
3. |
研究結果 |
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近世人が自己の先祖の中世史を考えた時、当然ながら、近世からの視点に立って先祖の事蹟を解釈する。
その際、@敗者復活の歴史として現在を叙述する、A逆に過去の栄光を強調し、現在の家の没落を仮の姿とする、
B徳川氏との縁を強調し、それ以外の歴史を消し去る、C軍記物等によって広く知られた名族の血を引くことを強調する、
等の作為があった。これらから考えると、少なくとも近世前期において、「中世史」は現在へ継続する歴史としてしか認識されなかった。
この意味で武士(及び元武士)の家にとっての中世史再構築とは、現在の家の顕彰行為であり、家としての自己認識という性格を強く表出させたものであった。 |