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本研究は、応用倫理学の方法論を探求すべく、先行研究のサーベイと類型化、および批判的検討を試みるものである。本年度は、すでに研究領域として成熟してきた観のある生命倫理領域の方法論を軸として、日本でも近年活発に論じられ始めてきた技術者倫理領域の方法論も加える仕方で応用倫理学一般の方法論を展望することを試みた。 |
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2006年10月13日に東京大学で開催された日本倫理学会第57回大会でのワークショップ「倫理学者の棲み分けに対する問題提起」に提題者の一人として参加し、「応用倫理学の視点から「棲み分け」を考える」と題する報告を行った。本報告において、内部告発問題を引き合いに応用倫理学の方法や異分野との連携のあり方について論じた。本ワークショップでは臨床哲学の研究者も提題者として報告を行なっており、討論を通じて、隣接領域との異同について大きな示唆を得た。このワークショップに先立って大阪大学の演習にゲストスピーカーとして参加した際にもこの件に関する理解の深まりを得ることができた。 |
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2006年6月24日、9月23日、12月26日に開催された京都生命倫理研究会にも参加し、生命倫理領域の具体的な問題に関する研究報告を聴き討論に加わることで、方法論レベルの議論との往復関係に関する考えを深めた。 |
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さらに、雑誌の部(1)の論文を執筆した。この論文では、生命倫理領域において盛んに論じられた原則主義や決議論をめぐる論争、近年技術者倫理領域においてしきりに擁護されている行為者中心主義などを丁寧に整理した上で、そうした方法論の相違が各研究者の倫理学者としての自己像の相違に由来することを指摘し、さらに、複数の方法論の中でいずれを採用すべきかについて一定の方向づけを示した。 |
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国内外の関連研究文献の収集も順調に行なうことができた。 |
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ただし、専用ウェブサイトが現段階では未整備であり、構築を急ぎたい。 |
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本年度の研究では、ビジネス倫理や環境倫理などの領域に関する方法論の掘り下げができておらず、また、応用倫理学とジャーナリズムの相違点、類似した他領域との相違点を明確にするに至らなかったので、今後の課題としたい。 |