研究の目標 |
本研究は、当初、次の事柄を達成することを目標とした。 |
(1) |
確率的推論や統計的推論の数学的構造を、関連文献を通じて正確に把握する。 |
(2) |
確率的推論や統計的推論の性格を科学哲学的観点から明らかにする。 |
(3) |
確率的推論や統計的推論の性格を論理学的観点から検討する。 |
(4) |
先行研究を踏まえて、古代哲学史、近世・現代哲学史における哲学の議論において特に確率的推論や統計的推論が重要な役割を演じているものを洗い出し、
現代の立場から再評価する。 |
(5) |
確率的推論や統計的推論の現代における適用事例としての進化論における推論や終末論法などを取りあげ、
それらについて論じている最近の文献を例に、問題点を検討する。 |
(6) |
経験的証拠に基づく医療現場における判断やリスク論における判断を検討する。 |
研究経過 |
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まず、研究に必要な関連文献を収集を行なった。 |
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次に、それらを使用して、最近の研究動向を把握、確認した。 |
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当初の予定では(1)から(3)の部分に重点を置く予定であったが、諸般の事情により、
実際には(2)、(4)、(6)に重点を置かざるを得なくなった。
取りあげた例も、脳科学や心の哲学(特に情緒論)における議論が多くなった。 |
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それらの議論に見られる、経験的証拠に基づく推論の妥当性を検討した。 |
研究成果 |
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情緒に関するあるタイプの議論(認知主義的理論)を論駁するのに最近の脳科学や心理学における成果を使うものがあるが、
そうした議論が必ずしも決定的ではないこと、したがって、また、認知主義的理論と対立する、
別のタイプの議論の優位さが示されるわけでもないことを明らかにすることができた。 |