2006年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 松戸 庸子 所属 外国語学部アジア学科
研究課題 社会構造と生活システムの変容に関する日中比較研究
研究実績の概要
【研究経過】(本年度は主に中国の都市勤労者に関する資料を収集・分析した)
・経済変動が社会保障システム(特に家族システムと社会保障制度)に与える影響が研究テーマであり、本年度は夏休みを利用して中国現地(南通市と通集市)において企業視察(8社※末尾に記載)と南通市外国貿易局でのヒアリングを実施した。
・年度の後半期は上記ヒアリングの資料整理と文献研究を行った。
【研究結果】(本年度は研究成果の公刊は無く、以下は主に得られた知見である)
・上記の企業視察はいずれも日系企業で、なおかつ南通、通州両市は日系企業誘致に積極的であり、また某銀行の協力を得て、企業幹部へのヒアリングと参観は実施できたが、企業従業員へのヒアリングはできなかった。次のステップに残された課題である。
・市場経済の浸透によって一般勤労者には社会的上昇欲求が極めて強く、少しでも労働条件の良い企業への転職が多く(企業定着率が低い)、賃金への執着が強く、手当の付く残業をむしろ喜ぶ(特にアパレルやゴム関係)という心性を持つ。また日本人とは対照的に責任強化を厭わず率直な上昇(昇進)指向を持つ。
・沿岸地域と内陸の人件費総額には大きな差があり、内陸のそれは沿海の約4割減。社会保険費は人件費の35%弱を占める。沿海部では出稼ぎ労働者も含めて100%の強制加入。
・急速で堅固な学歴社会が形成されつつある反面、職業の多様化、社会移動率の上昇、経済社会的格差の拡大と同時に、西側の先進国と同様の社会問題(失業、新卒者の就職難、フリーターやニートの登場)が発生し、都市部ではすでに巨大な大衆消費社会が形成されている。
・社会保障面では、中国の医療面での問題情況の研究を進めた。「一人っ子政策」を20年以上にも渉って推進する中国では、都市部では日本以上のスピードの高齢化が進んでおり、80年代以降、社会保障制度もコスト意識の欠落する社会主義的なものから経済計算や人口予測などの科学的な予測をふまえたシステムへと転換しつつある。しかし、社会主義によって増幅された許認可権や市場原理の悪用によって、医療費に占める薬剤費が異様に高い社会を作り出している(中国60%;日本18%)。また医療資源分布の不均衡や伝統的慣習の存続により医療会計の不明朗問題(医師への法外な謝礼など)も突出している。社会的な安定を意味する「和諧社会」を目指す中国の社会保障制度の最大難点であり、同時に興味深いのは、都市と農村との断絶(皆保険の未達成)、社会保障制度を通じた富の再分配問題に対して、社会主義中国がいかなる回答を出すかという点である。


南通市:名南軟件(南通)有限公司、南通富士通、仁華時装有限公司、PIC(南通大日本インク)、江蘇英瑞(アパレル)
  通州市:山本 塑(ゴム)南通有限公司、中江南通公司(カーテン等)、大富豪ビー公司
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 @ 書名
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A 論文題目 A 書名
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