2006年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 森山 幹弘 所属 外国語学部アジア学科
研究課題 インドネシアにおける言語の変化
研究実績の概要
 研究計画に乗っ取り、おおむね予定通りの研究を行うことができた。すなわち、夏の授業の無い時期を利用したインドネシアでの調査(約4週間)を中心として研究を行った。
 一方5月には中間的な発表として東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所における研究会で「インドネシアにおける言語変化:スンダ語の状況について」と題する報告を行った。さらに、8月にはインドネシアのバンドゥン市のパジャジャラン大学公共政策・地域開発研究所のセミナーで「言語政策と文化:スンダのケース・スタディ」と題する研究発表をインドネシア語で行い、進行中の研究に対する貴重なフィードバックを得ることができた。それらの研究から明らかになったことは、以下の通りである。
 近年、インドネシアの言語使用の状況に変化が起きているように思われる。それはジャワ語、スンダ語、バリ語のメディアでの使用の拡大に加え、英語や中国語の公共の場での使用などの現象が一つの例である。その背景としては、
(1)強権的なスハルト体制の崩壊とともに民主化が進み、また各種の規制が緩和されてきたこと、(2)情報のグローバルなフローがインドネシア社会にも浸透してきたこと、(3)地方分権化に向けて法改正が行われ、地方の自治権が拡大してきたこと、などが考えられる。これらの点を踏まえて以下の3点が特に重要である。
(1)インドネシア語と「地方語」という二分された言語政策は、独立国家にとっての政治的な課題として進められた。地方語は国語となったインドネシア語の下部に並列され、国語に対して従属的な位置が与えられていった。また、インドネシア語と地方語の使用についてはある種のデマケーションが行われた結果、政治的な空間から地方語は排除され、私的空間、文化的空間に限って使用されるようになっていった。その結果として、地方語には後進的、伝統的というイメージが生まれていった。
(2)公共の場から締め出された地方語の一種のリバイバルの動きが見られる。例としてスンダ語を取り上げると、スンダ語の話者が多数を占める西ジャワ州の州都バンドゥンでは、2005年の時点で3つのテレビ放送局がスンダ語を使用するようになった。また、文化的なテレビ番組だけに使用されるのではなく、ニュースなどの番組にも使用されるようになってきた。
(3)地方語のリバイバルの動きと地方自治権の拡大の関係については、スハルト体制崩壊後に行われた地方自治関連の法改正が関係していると考えられる。特に1999年の地方自治を拡大する法の発布は重要な意味を持ち、それぞれの地方の行政法の制定を促した。西ジャワで出された2003年の行政法においては地方語、地方文学、固有の文字の育成が政治的な課題として提示された。そのことは独立以降、地方語に与えられてきた地位の変更を公的に促すものであると言える。その影響として先の新しい現象が考えられるが、今後の国語インドネシア語と地方語の関係にどのような変化が生じていくのか注目していく必要がある。
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@ 論文題目 「東南アジア島嶼部の聯句、パントゥン」 @ 書名 Script as Identity Maker in Southeast Asia (仮題)
雑誌名 『アジア遊学 和漢聯句の世界』 出版社 KITLV Press
巻号 95号 論文名 “Sundanese in Aksara Walanda: the choice of script in the 19th century Sundanese language community of the Dutch East Indies”
発表年月 2007年1月 発表年月 2007年
ページ pp.146-159 ページ 未定
著者名 森山 幹弘 著者名 Mikihiro Moriyama
備考   備考  
A 論文題目 A 書名
雑誌名 出版社
巻号 論文名
発表年月 発表年月
ページ ページ
著者名 著者名
備考   備考  
B 論文題目 B 書名
雑誌名 出版社
巻号 論文名
発表年月 発表年月
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著者名 著者名
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