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【研究経緯】 |
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キメラ土器(異系統要素同居土器) の長期的かつ広域的な存在様態を検討した。 |
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キメラ土器と異系統土器(遠方出土精製土器)を手がかりにして、並行型式が同所的に一括出土する遺跡の悉皆調査をおこなった。 |
B |
同所的に存在する並行型式の、系統性の多さの検討を網羅的におこない、型式加担者の所属地方の問題につなげながら、型式加担者の動きを社会的紐帯形成の動きとして追求してみた。 |
C |
貝塚・低湿地遺跡に注目し、出土する動植物遺存体の偏差を貯蔵システムの違いと組み合わせて検討し、地方ごとに狩猟・採集・漁撈への依存度合いが大きく異なる社会が存在したことを検討した。 |
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【研究結果】 |
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多種類のキメラ土器が日本列島に広く存在することを例証する過程で、土器型式が精製土器と粗製土器とに分化する場合、精製土器は移動性が高く粗製土器は在地性が高いという対照的な性格に気づき、在地性の強い粗製土器が土器製作の単位であることを見いだした結果、粗製土器の有無が地方社会の組織的編成をうかがう手がかりとなることや、キメラ土器の製作は特定土器製作集団によることなどを論じられることとなった。つまり、同じような規模・程度の社会が日本列島に並列的に存在するのではないことを見とおせるようになった。 |
A |
キメラ土器が頻繁に出現する理由が並行型式間に往還システムが存在したためであることと、その往還システムが、地方ごとに変異が激しい生態系に適応した狩猟・採集・漁撈への依存度合いが大きく異なる地方社会によって担われたことを、動植物遺存体の分析から見いだした。 |
B |
大小さまざまな規模の集落を結びつける媒介中心性を有する集落の分析を異系統土器とキメラ土器の様態の検討から果たし、ハブ機能を担う特定集落が広く点在したことを論定し、往還システムの経路がこれらのハブ機能をもつ地方ごとの集落であることを見いだした。 |
C |
由来は一つで一系統的変遷を有するとみなされてきた縄紋文化という日本列島の先史文化は、その想定とは異なり、違う環境に適応した地方ごとに内的編成の異なる諸文化がネットワーク化したものであるという社会考古学的な見通しをえた。 |