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5月より夏の終わりまでは、連続時間モデルを構築するために準備として、関連論文の収集とそれらの読破に大半の時間を費やした。とくに、確率解析の基礎となる関数空間の概念の把握が中心になった。同時に、ジャンプのある価格過程に対して、それらで構成されるポートフォリオの構成に関する論文を三井謙一氏と共同執筆し、本学の経営研究センター発行のワーキングペーパー(Center for Management Studies, Working Paper Series, July 2006, No. 0603)に発表し、内外からのコメントを集めるとともに、Stochastic Process and Application誌へ投稿した。その結果が11月初旬にあり、数箇所の改訂を要求され、現在改定作業中で、完成次第、再投稿する予定である。ただし、レフェリーよりPache Research Subsidyに対する謝辞は削除するように要求されており、Pacheの語句の入った成果は残念ながらワーキングペーパーのみの形でしか発表できない。 |
2. |
9月より関連する問題をまず離散時間の範囲で考察した結果、市場に安全資産が存在する場合のモデル化が必要であることが判明した。そのため、離散時間におけるインデックスファンドの構成に関する著者の過去の論文の不足部分を抽出し、市場ポートフォリオとの関係を分析することが急務であることに気づいた。 |
3. |
11月より、上記のモデル化を行い、単調で長い計算の結果、安全資産を含み、トラッキングエラーと呼ばれるものを最小にするインデックスファンドが存在するための必要十分条件を導出できたので、「安全資産を含むインデックスファンドとその性質」という表題の論文を完成させ、南山大学経営研究にその成果を発表することにした。 |
4. |
上記の論文を作成する段階で、連続時間問題の解析手段としては、確率変数が作るヒルベルト空間における射影定理とある種の条件付期待値が有効に働き、さらに、マルチンゲールとの関係が明らかになった。 |
5. |
4で得た結果を動的な問題へ適用することによって、究極の目的であった連続時間問題を解決できる見通しが立ったため、今後はこの方向で研究を続行したい。 |