対象地域を神奈川県の2つの二次医療圏(湘南西部・県央)、対象疾病を呼吸器系、循環器系、消化器系、筋骨格系の4つとして、以下の研究を進めた。
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データ収集:
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1. |
疾病別の患者数(需要)を調べるために、厚生労働省平成22年患者調査と病院調査のデータを収集し、二次医療圏ごとの年齢別疾病別罹患率の基礎データを作成した。
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2. |
医療サービス供給側(病院)の実態調査のため、DPC(診断群分類包括評価)に参加している対象地域内の13の病院を対象に、病院の基礎データ(病床数、医師看護師数等)や疾病別の患者数のデータを病院情報局(hospia.jp/dpc/)から収集した。
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3. |
平成22年国勢調査から、対象地域の町丁目ごとの人口分布を調べた。
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モデルの作成と計算実験:
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疾病別の地域格差を視覚化するために、「単科病院配置モデル」と「総合病院配置モデル」を提案し、収集したデータを用いて計算実験を行った。いずれのモデルにおいても、患者から病院までの距離の最小化を目的とした。これは、高齢の患者およびその家族が病院に通いやすいという視点からである。
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1. |
単科病院配置モデルでは、4つの対象疾病のうちの1つのみを診療対象とする専門病院を配置する場合の最適配置を求める。これにより、疾病ごとにどの地域に病院の供給力が不足しているのかが分かる。
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2. |
総合病院配置モデルでは、4つの対象疾病をすべて扱う総合病院を配置する場合の最適配置を求める。医療スタッフの配置等の問題から、専門病院を配置することは現実には難しい。そのため、需給バランスを考慮して総合病院を配置するとしたら、どこが最適であるかの指標を求めるためにこのモデルを提案した。
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結果とその公表:
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患者の居所から病院までの限界距離を5kmとして計算実験を行い、疾病によって需給バランスに差が生じていることを確認できた。病院の新規配置を行った場合に、需給バランスが改善されることも確認できた。ここまでの成果を、INFORMS Annual Meeting(2012年10月、米国フェニックス)、「都市のOR」ワークショップ(2012年12月、南山大学)にて発表し、論文としてまとめて南山大学紀要「アカデミア」情報理工学編第13巻に投稿し、掲載された。
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