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2012年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書 |
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氏名 |
村杉 恵子 |
所属 |
外国語学部英米学科 |
研究課題 |
文の端(周辺部分)からはじまる文法獲得:実証から理論へのインパクト |
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研究実績の概要 |
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[総括] |
普遍文法の実在性と、言語間の相違が幼児の言語獲得の段階に現れるとする仮説、さらに、言語習得可能性として、言語が、必ずしも動詞、名詞といった語彙範疇から獲得さえるのではなく、むしろ日本語のような膠着語言語と英語を比較することで、終助詞のような文末の談話指標から獲得されることを発表した。 |
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[実証的研究] |
1歳から2歳ごろの幼児は、多くの言語において共通して、(i)時制(Tense)の素性が未指定であり、(ii)「埋め込み」を含む構造の構築ができず、(iii)統語範疇化においても未熟である、などの特徴が指摘されている。1−2歳児の「できないこと」は少なくない。2011年度から2012年度にかけてのコーパス分析(CHILDES)においては、わずか1歳の幼児が、構造的には文よりも上位に位置する周辺部分(CP)を発話することを詳細に調査した。例えば、一語文段階にある幼児が「ねー」などと発話することにより、聞き手との談話のリンクを計ることを実証的に示した。 |
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[理論的研究] |
上記の実証的研究をもとに、理論的分析への提言として、このことが、言語獲得が、文の中核部分というよりはむしろ、周辺部分からはじまることを示唆し、さらに周辺部分が中核部分の獲得へのきっかけとなる可能性をも示唆した。これについては、ヨーク大学、日本文法学会(招聘)などにおいて発表し、多くのコメントを得ることができた。 |
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[基礎研究の強化] |
上記の理論的実証的研究の基盤となるコーパスについての整備も進めた。コネチカット大学との共同研究により、長期にわたり構築してきたオリジナルな実証データもあらためて整理と検証を開始した。その上で、CHILEDESなどの既存のコーパス分析とあわせて、言語獲得の普遍的な理論的仮説を検証し言語獲得モデルとして拙論で2011年度に提案した「Pragmatic Bootstrapping」仮説を詳細に検証した。
とくに2010年以前の段階で用いたデータベースのうち、一人の幼児について、そのこどもが読み書き困難である可能性についてその保護者から指摘があったため、本年度は読み書き困難の実態に関する現在の科学論文と第一、第二言語獲得における実証研究について調査を開始し、これについても小論にまとめて発表した。
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「雑誌」の部 |
「図書」の部 |
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論文題目 |
Steps in the Emergence of full Syntactic Structure in Child Grammar |
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書名 |
Studies in Japanese and Korean Linguistics |
雑誌名 |
Nanzan Linguistics |
論文名 |
The Intermediate Stages in the Grammar Acquisition: A View from Japanese.” |
巻号 |
9 |
出版社 |
Lincom GmbH, Munchen |
発行年月 |
13 |
出版年月 |
2012 |
ページ |
85-118 |
ページ |
104-119. |
著者名 |
Keiko Murasugi |
著者名 |
Keiko Murasugi |
備考 |
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備考 |
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A |
論文題目 |
「言語獲得の観点から探る終助詞の機能」 |
A |
書名 |
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雑誌名 |
南山大学 『アカデミア (文学・語学編)』 |
論文名 |
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巻号 |
第92号 |
出版社 |
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発行年月 |
2012 |
出版年月 |
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ページ |
1-42. |
ページ |
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著者名 |
木戸康人・村杉恵子 (2012) |
著者名 |
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備考 |
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備考 |
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B |
論文題目 |
「読み書き困難(ディスレクシア)の子どもたちの尊厳のために:言語理論と英語教育からの一考察」 |
B |
書名 |
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雑誌名 |
『アカデミア(人文・自然科学編)』 |
論文名 |
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巻号 |
第5号 |
出版社 |
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発行年月 |
2013 |
出版年月 |
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ページ |
195-220. |
ページ |
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著者名 |
橋本知子・村杉恵子 (2013) |
著者名 |
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備考 |
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備考 |
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