研究結果:
唐代は日本漢文学が中国へ伝わった原点と言える時代である。よって中国における日本漢文学の受容を検討しようとすれば、唐代から出発しなければならない。筆者はかつて「空海在唐作詩考」という論文を書いたが、それは現在確認されている空海の在唐作詩四首中の一首「離合詩」のみ論考したもので、ほかの三首についてはまだ着手していない。なお、空海の「為大使與福州観察使書」、「與福州観察使入京啓」等の漢文も中国文人の目にとまった非常に重要な文献である。よってこれらも上記の漢詩と併せて検討する必要がある。空海以外にも、多くの遣唐使たちが中国文人と交流したが、その実状は未だに解明されていない。これを鑑み、本研究は総合的な視点から、唐代における日本漢文学の受容を全面的に究明したものである。
研究経過:
空海および遣唐使たちの作品をはじめとする日本漢文学の唐代への流伝について網羅的に資料を収集した上で、詳しく検討して論文にまとめ、「唐人所見日本漢文考」と題して、2012年8月に中国新疆師範大学で開催される「唐代文学第16回国際学術研討会」で発表し、研究関係者の意見を伺った。しかし、若干の資料について再検討の必要があり、当論文の改訂にはまだ時間がかかるため、これに関連するもう一篇の論文を修訂し、「日本填詞西伝考」を題して上海古籍出版社の『国際中国文学研究叢刊』に寄稿し、第2集に掲載されることとなった。
なお、2012年9月に安徽大学で開催される「清代文学国際学術研討会」で「李長栄『海東唱酬集』再考」という論文を発表したほかに、南山『アカデミア』に「蘇軾詩注解」(十一、十二)(共著)が掲載された。 |
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