2012年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 玉井 利幸 所属 法学部法律学科
研究課題 利益相反 M&A 取引における取締役と支配株主の義務 −会社法改正とキャッシュアウト−
研究実績の概要
 本研究では、特別支配株主の株式等売渡請求において対象会社の取締役が負うべき義務について検討してきた。特別支配株主の株式等売渡請求は会社法改正によって新たに創設される予定の、少数株主の締出し(キャッシュ・アウト)のための特別の制度である。中間試案の解説や法制審議会の議論によると、株式等売渡請求の対象会社の取締役は、締出される少数株主の利益を守るために義務を負うとされる。伝統的には取締役は会社に対して会社の利益を向上させる義務を負うと考えられてきた。株式等売渡請求における取締役の義務は少数株主の利益の保護を目的としているので、これまでにない新しい義務を創設したようにも思える。しかし、取締役は会社に対し企業価値向上義務と法令遵守義務を負っており、締出される少数株主の利益を守る義務は両方の義務と矛盾しないと考えられる。少数株主を保護することは企業価値向上に資するし、株主間の富の移転を防止し少数株主の利益を保護することを求める規定は会社法のなかに既に存在しているからである。株式等売渡請求において対象会社の取締役が負うべき少数株主の利益を守る義務は、会社法に既に存在している考え方を株式等売渡請求の場面に明示的・例示的に適用したに過ぎないと考えるべきである。
 具体的な義務の内容については次のように考えるべきである。すなわち、支配株主による少数株主の締出しにおいては、対象会社の取締役は、取引の構造上、支配株主と少数株主の双方代理的な立場に立つことになる。両方を満足させるために、取締役は、締出取引から生じる会社の価値の増加分を支配株主と少数株主で1:1で分けあうような締出取引をすべきであり、そのような価格を追求すべき義務があると考えるべきである。少数株主の締出しにおいては、締出される少数株主に支払われる対価の額が決定的に重要であり、価格に関する義務が取締役の義務の中核をなす。少数株主を締出すための手法は、売渡請求制度の他にも様々なものがあるが、手法が異なっても対象会社の取締役が締出取引で負うべき中核的な義務は同じように考えるべきである。
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@ 論文題目 株式等売渡請求、キャッシュ・アウト、取締役の義務 @ 書名  
雑誌名 南山法学 論文名  
巻号 第36巻3・4合併号 出版社  
発行年月 2013年 出版年月  
ページ 未定 ページ  
著者名 玉井利幸 著者名  
備考 2012年4月頃予定 備考  
A 論文題目   A 書名  
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B 論文題目   B 書名  
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