2012年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 渡邉 学 所属 人文学部キリスト教学科
研究課題 現代における新宗教への回心と宗教情報リテラシー
研究実績の概要
 本年度は、回心研究全体の枠組の中における新宗教への回心の問題に焦点を当てて研究を行った。
 ランボーの研究(Understanding Religious Conversion (1993))によれば、「信仰体系の欠如からある信仰への献身への変化」[入信としての回心]、「ある信仰体系への宗教的所属から他の宗教的所属への変化」[改宗としての回心]、「一つの信仰体系の枠内でのある志向から他の志向への変化」[転派としての回心]を包括する概念として回心(conversion)を用いている。
 ランボーは、概して回心が「サウロの回心」のような劇的で短期的に生じることがまれであり、むしろ、長い時間をかけてさまざまな要因が複雑に寄り合わさって、段階的に起きることを強調している。これは、回心の段階的モデルと呼ばれる。
 新宗教やカルト(仮に「社会問題化した新宗教)と定義しておく)の場合、さまざまな議論が対立している。それは、とりわけカルトに対する入信の場合、そもそも自発的な入信がありうるかどうかということである。一方で、カルトの被害者(脱会者)や家族のケアを主に扱う立場の人々の場合、カルトは、さまざまな心理的な操作(マインドコントロール)によって改宗者を募るのであり、改宗者はあくまで被害者である。他方で、主に現役の信者を調査対象として選ぶ宗教学者の場合、〈カルト〉への入信者にも当然ながら意思の自由が認められ、自発的な入信が行われているとする。ランボーもまた、この後者の立場を取っている。
 ランボーの回心研究の特徴は、広い歴史的な視野に立ち、また、先進諸国だけでなく、アジアやアフリカにおける宣教の報告などによって、宣教のリアリティに迫っていることである。近年の「合理的選択理論」をある意味で背景とし、ランボーは、回心者がさまざまな状況を合理的に判断しながら、自らがベストの選択肢であると判断したものを選ぶことを指摘している。
 この結論は、私が今まで行ってきたエホバの証人やオウム真理教の信者の回心体験とも一致している。本年は、両者の元信者のインタビューを行ったが、実際、回心が継続的であり、段階的であることを確認できた。
 現在、ランボーの同書の翻訳を終え、また、関連論文を準備しているが、残念ながら、今年度中にいずれも刊行することはできなかった。
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