本研究の目的は、各国で異なる基準認証制度が国際貿易に与える影響を理論的に考察することである。各国政府は、国内で生産・販売される財の様々な基準(安全基準や環境基準など)を設定している。基準を満たさない財は生産や販売が禁止される。各国の事情に合わせて独自の基準が採用される場合は、基準を満たすために、企業は追加的なコストを負担することとなる。 |
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基準認証制度の既存研究のサーベイを行い、どのような基準設定が特に国際貿易に影響を与えるかを調査した。各種の図書やデータなどを精査した。WTO(世界貿易機関)のルールでは、国際機関が設定する国際基準の採用を推奨しているが、各国独自の基準の設定も必要な場合は認めている。また、基準を変更する場合は、加盟国に通知する義務があることも分かった。特に安全や健康に関連する基準制度は、各国で異なっていることが多く、企業は追加的な負担をしている可能性があることが分かった。 |
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基準の中でも環境基準についての基本分析を行った。小国モデルを用いることで、生産に関する環境基準について深い理解を得ることができた。研究成果は『南山経済研究』に掲載された。分析内容は以下の通りである。 |
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小国開放の一般均衡モデルを用いて、産業間で汚染の相互作用がある下で、貿易利益および環境基準の強化の効果を分析している。汚染産業から排出される汚染は、環境水準に敏感な産業(例えば、農業)の生産性を低下させる。本モデルでは、両財とも生産される設定のために、汚染の影響はいつも存在する。主な結果は以下の通りである。第一に、自由貿易は、貿易パターンと環境規制(環境税)の水準によっては、小国の経済厚生を悪化させる。第二に、環境基準の強化によって、汚染を減らすクリーンな技術の導入が必要となった場合、環境税が最適に課されていなければ、小国の厚生が悪化する可能性があることを示した。特に、政府が汚染産業に厳しい規制をして、環境に敏感な産業の生産を奨励しているときに、この結果は生じやすいことが明らかとなった。
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