2012年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 青柳 宏 所属 人文学部人類文化学科
研究課題 日韓(中)のボイス・アスペクトの交替現象に関する対照研究
研究実績の概要
  まず、本年度前半は日本語と中国語のいわゆる結果複合動詞の対照研究に重点を置いて研究を進めた。たとえば、つぎの(1a)の日本語においては複合動詞「押し倒す」の前項(V1)「押す」も後項(V2)「倒す」も他動詞であるが、意味的に対応する中国語の「推倒」においてV1は他動詞であるが、V2は非対格自動詞である。  
(1) a.   太郎はその木を押し倒した。
  b.   張三推倒那果樹木。
さらに、主要部前置型の日本語においてのみならず、一般に主要部後置型だと考えられている中国語においてもV2が複合動詞全体の結果含意性やアスペクトを決定しているようにみえる。その理由は、日本語の「押し倒す」が語彙的に生成されるのに対して、中国語の「推倒」が統語的に生成され、V1とV2の間にAsp(ect)なる機能範疇が存在するからだとの結論に達した。この研究内容は、以下の論文に発表した。
1. 『複雑述語研究の新展開』(執筆担当部分:「中国語と日本語の結果複合動詞について」、共著(共著者:張楠、分担執筆80%))、共著、2013年6月(予定)、開拓社、総ページ数未定、岸本秀樹、由本陽子、ほか15名、(27p.)
  つぎに、後半は日本語と韓国語の比較に重点を移した。(1a)の「押し倒す」に対して「*押し倒れる」が日本語で許されないのは、影山(1993)以来「他動性調和原則」に違反しているからだと考えられてきた。しかし、上述のようにこの原則は中国語の(1b)には当てはまらず、韓国語にもつぎの(2b)のように一見当てはまらないものがある。  
(2) a.   Kom-i   Chelswu-lul   capa-mek-ess-ta
クマが   チョルスを  捕まえ・食べ た
  b.   Chelswu-ka   kom-eykey   capa-mek-hi-ess-ta
チョルスが    クマに     捕まえ・食べ・られ た
これらの事実を分散形態論の立場から見直し、日中韓の3カ国語において複合動詞はすべて統語部門で形成されるが、その複合のレベルが異なるため、見かけ上「他動性調和原則」に従っているようにみえるのだとの結論に達した。この内容は以下の機会に口頭発表した。
2. "On Applicative/Aspect Positions in Japanese and Korean," 単独、日韓方言と言語記述に関する国際シンポジウム2012(招聘発表)、2012年11月4日、京都大学.
3. "On (so-called) Lexical and Syntactic Compound Verbs in Japanese and Korean," 単独、言語学コロキアム(招聘発表)、2013年3月26日、韓国ソウル国立大学.
「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目   @ 書名 『複雑述語研究の新展開』
雑誌名   論文名 「中国語と日本語の結果複合動詞について」
巻号   出版社 開拓社
発行年月   出版年月  
ページ   ページ ページ番号未定(27p.)
著者名   著者名 青柳宏・張楠
備考   備考 2013年6月頃予定
A 論文題目   A 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考  
B 論文題目   B 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考