2012年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 森泉 哲 所属 短期大学部英語科
研究課題 対人コミュニケーション過程の文化間比較―文化の多層性の観点から―
研究実績の概要
本研究では,従来の日本・アメリカというような「国」単位での文化という概念に加えて,「家族」を新たな文化変数として加え,文化の多層性がコミュニケーション様式へ及ぼす影響について検討した。従来の対人コミュニケーション研究では,国と個人による影響力のみを扱ってきたが,個人はあらゆる文化(民族,地域,性,階級,職業,価値観等)に影響され,複雑なアイデンティティを保持していると考えられている。本研究では,文化の多層性に着目し,国のみで捉えきれない文化変数を扱い,個人の対人行動様式に大きな影響を及ぼしていると考えられる「家族」という文化に着目して,対人コミュニケーション過程の比較文化研究を行い,研究は当初予定していた通り,順調に経過した。
 研究1(研究成果公刊物@)では,国文化とソーシャルサポートのメッセージ表出について検討した。日米の大学生に行ったアンケート調査をもとに,ソーシャルサポートを誰にどのように求めるのかについて,多重コレスポンデンス分析を通して,明らかにした。その結果,日本人大学生は,友人に対して,「話しをする」「愚痴をいう」ことがより顕著であったが,アメリカ人大学生は,家族や恋人に対して,「感情を表出する」「慰めてもらう」などがより顕著であった。一方,国と関連せずに,家族友人からは,「助言をもらう」「問題について話し合う」ということが指摘された。このことから,親密な関係(家族,恋人)に対して同様の機能をもちながらも,国レベルの違いによって,家族のようなより小さな文化にも影響を及ぼしていることが指摘できた。
 研究2(研究成果公刊物A)では,国・家族文化とウェルビーイングとの関連について検討した。ヨーロッパの機関である国際調査プログラムが研究用のために開示している世界数十カ国の国際比較データを使用して,マルチレベル分析を通して2次分析し,国・家族文化と主観的幸福感との関連を明らかにした。結果として,夫婦間で子育てに対して共有的な価値観を保持していると,家庭生活満足感も高くなることが見出された。また国レベルとの相互作用では,国レベルで性平等意識が高い国で,夫婦間で子育てに対して価値観が共有されていない場合,性平等意識が低い国と比較すると,家庭生活満足度は低くなる傾向が見出された。この結果からも,当初予定していたとおり,国文化だけでなく,家族文化によって個人の行動・心理的側面が規定されることが見出された。

「雑誌」の部 「図書」の部
@ 論文題目 ソーシャルサポートを誰に,どのように求めるのか?−日米比較― @ 書名  
雑誌名 社会言語科学会第30回大会発表論文集 論文名  
巻号   出版社  
発行年月 2012年9月 出版年月  
ページ pp.116-119 ページ  
著者名 森泉 哲 著者名  
備考   備考  
A 論文題目 Monetary Wealth or Shared Values? Multilevel Analysis of Family Life Satisfaction A 書名  
雑誌名 人間関係研究 論文名  
巻号 12 出版社  
発行年月 2013年3月 出版年月  
ページ   ページ  
著者名 森泉 哲 著者名  
備考   備考  
B 論文題目   B 書名  
雑誌名   論文名  
巻号   出版社  
発行年月   出版年月  
ページ   ページ  
著者名   著者名  
備考   備考