2012年度 パッヘ研究奨励金T-A-2(特定研究助成・一般)研究成果報告書

氏名 斎藤 衛 所属 人文学部人類文化学科
研究課題 カートグラフィー構造の起源 ―
日本語の終助詞とモーダルに関するケース・スタディ
研究実績の概要
1. 統語構造においては、演算子、補文標識、モーダルといった要素が階層をなす。近年、 この階層構造が注目され、いわゆるカートグラフィー研究が盛んに追究されている。一方で、句構造形成の理論は極端に単純化され、二つの要素を含む構成素を形成する「併 合」のみが句構造形成に係る操作であるとされている。本研究は、この二種の研究を一貫させるために、併合のみによる句構造形成を仮定し、カートグラフィー構造を形態的あるいは意味的に説明することを目的とする。
2. 本研究では、まず、遠藤善雄氏による日本語終助詞のカートグラフィーを批判的に検討し、日本語終助詞が純粋に談話的機能を有することを示した。その上で、「わ<よ<ね」といった階層が、「わ」の意味的選択制限と他の終助詞の談話機能から導かれることを明らかにした。この研究は、6月にジュネーブ大学で開催された国際学会Syntactic Cartography: Where do we go from here? において発表 (招待研究発表) し、さらに、本学大学院生・原口智子との共著論文 “Deriving the Cartography of the Japanese Right Periphery: The Case of Sentence-Final Particles” にまとめ、理論言語学専門誌 Iberia: An InternationalJournal of Theoretical Linguisticsにて公表した (12月)。
3. 次に、日本語モーダルの分布を詳細に検討し、すでに観察されてきた様々な共起制限が、形態的制約や意味的選択制限により説明されることを示した。昨年度の補文標識に関する研究、上記の終助詞に関する研究と合わせ、この研究により、日本語におけるカートグラフィー構造が、すべて句構造形成理論とは独立に説明を与えられることになっ た。この全体像は、国立国語研究所第31回コロキウム (2月26日) にて発表し、また、“Conditions on Japanese Phrase Structure: From Morphology to Pragmatics” と題する論文として、言語学研究センター機関誌Nanzan Linguistics第9号に公表した (3月)。
4. 以上の成果をふまえ、同様の手法をもって、複合語を分析する新たなプロジェクトを開始しつつある。日本語の複合動詞には、特異な制限があることが知られているが、これを意味的選択制限から導こうとするものである。予定通り研究が進めば、この成果は2013年6月に台湾にて開催される第8回東アジア理論言語学ワークショップ (TEAL8) に
おいて発表 (招待研究発表) することになっている。
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@ 論文題目 Deriving the Cartography of the Japanese Right Periphery: The Case of Sentence-Final Particles @ 書名  
雑誌名 Iberia: An International Journal of Theoretical Linguistics 論文名  
巻号 4.2 (Special Issue in Honor of Andrew Radford) 出版社  
発行年月 2012年12月 出版年月  
ページ 104-123 ページ  
著者名 Mamoru Saito, Tomoko Haraguchi 著者名  
備考   備考  
A 論文題目   A 書名  
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著者名   著者名  
備考   備考  
B 論文題目   B 書名  
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